《77歳の日本人留学生》還暦後「中国に9回留学」!愛称は“おばあちゃん”、21歳の友達もできた…会社員だった彼女が中国留学を決めた理由

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彼女は、雲南省・昆明市で、馮さん(21歳)と出会った。昆明出身の大学4年生で金融学を学ぶ彼は、独学で日本語能力試験N1に合格した。

取材中、話を聞いていた馮さんが、あとでこう話してくれた。「村田さんと知り合ったのは1年ちょっと前。日本のおばあちゃんとしては珍しく、どこか中国人っぽい、面倒見のいい人だ。彼女は中国語を学びたい、僕は日本語をもっと話したい、自然と教え合うようになった。会話はほとんど日本語で、話題も尽きない。まるで“忘年の交わり”になった」。

世代も国境も越えた、温かな交流がそこにあった。馮さんは自身の夢についても語ってくれた。「高校時代にアニメや日本史に触れる機会が多く、それがきっかけで日本語を学び始めた。来年は日本に留学したい。日本では、村田さんのように親切な人が、きっと多いと信じている」

自分の目で見ると、違った世界が見えてくる

村田さんにとって、半年ずつの中国留学は、いつも刺激に満ちた時間だ。自分の目で中国を見て、自分の言葉で中国の人々と語り合う——それは、何にも代えがたい喜びだ。

「近年では、メディアの影響もあってか、中国に対して『怖い国』という印象を抱く日本人が少なくないようだ。実際にその土地に身を置き、人々と向き合ってみると、見えてくるものはまるで違う」と村田さんは穏やかに語る。

村田さんは自らの体験を通して、報道では見えてこない中国の素顔に触れてきた。「道を尋ねると、スマホで日本語に翻訳して見せてくれる。言葉を交わし、円卓で杯を重ね、歌を歌ううちに、気づけば見知らぬ誰かが友人になっている。誤解があっても、言葉と笑顔で、すぐに溶けていくのよ」

なかでも彼女が驚いたのは、バスの中で隣の人との会話が自然に始まり、たった数分で微信(WeChat)の連絡先を交換するような気軽さだ。

日本では、知らない人に話しかけるのに少し勇気がいる。だが中国では、人との距離がぐっと近い。その気さくで開かれた空気に、彼女は何度も心を動かされた。

「いつの間にか、自分でも中国人のように振る舞い、そこに溶け込んでいるのを感じる。毎年6カ月の留学と遊学の日々は、夢のようにあっという間に過ぎていく。体力と気力がある限り、留学を続けたい」(村田さん)

「半年は日本、半年は中国」――気の向くままに生きる。77歳の村田さんは、今日も朗らかな笑顔を浮かべている。

【もっと読む】中国出身の私がNHK朝ドラ《あんぱん》を見た結果 戦争描写に感じる「抗日ドラマ」「中国の歴史記憶」との相違点 では、ジャーナリストの黄文葦氏が、NHK朝ドラ「あんぱん」を起点に日中関係について詳細に解説している。
黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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