"夜食テロ"を生む「孤独のグルメ」のこだわり じわじわ人気化し、シーズン5に突入

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初めは、自身が得意とする情報番組やバラエティーでの映像化を考えたが、世界観を表せるイメージが湧かない。五郎の心の声を前面に押し出せる「モノローグ(独白)で構成されるドラマ」で表現すべきだと思い、TV局の人に会うたびに原作本を見せて「これをドラマ化しませんか?」と訴えたという。「もちろん、当時の本業はバラエティーだったので、合間合間にでしたが、心の中につねに『孤独のグルメ』がありました」

誰が観るのか、そのようなドラマに30分枠は取れない……など、なかなかOKがもらえずにいたが、やはり言い続けるものである。テレビ東京の編成から「深夜の枠が30分空くから、やってみるか」と声が掛かったのだ。

「世界観を活かすためには、ドラマ性は極力排除し、シンプルに伝えたい。だからこそ、主人公を演じていただく俳優さんは、“画力”(えぢから)の強い人が絶対条件でした。『商談を終えて、食べるだけ』なので、役者に絶対的存在感がないと成り立たないんです。そんなとき、TVドラマや映画で松重さんを見て、この人だ!と確信しました」

スタッフが体感して「これぞ!という1店」を決める

番組に出る店はスタッフ全員で探しているという

久住氏は、吉見さんの情熱を理解し、松重さんのキャスティングにも共感してくれた。唯一出された条件は、「漫画に出した店ではなく、自分たちで新しい店を探す」こと。しかし、これが予想を上回る難しさだったという。

「今もそうですが、作品の世界観に合う店をスタッフ全員で探してリストアップし、1店につき2人以上が別々に食べに行って全員がここだ!と思えてから、初めて取材交渉をします。でも、ほとんどが小さな定食屋やレストラン。『このお店の、ここが素晴らしいと思った』と、われわれの思いを真摯に伝え、頭を下げますが、『常連さんに迷惑をかけたくないから』などと断られることが多くて、打率は意外に低いんです。でも、絶対に無理強いはしません。孤独のグルメの世界観を理解し、われわれの思いを受け止めてくれたお店にご登場いただいています。今までに約50のお店を紹介しましたが、1件もトラブルが起きていないのが唯一の自慢です」

ドラマ制作に当たって、過度な演出をせず、普段のお店の雰囲気を忠実に再現しているのもトラブルがない理由のひとつだろう。リサーチの段階で、お店の人の動き方やお客さんとの何気ないやり取りを密かにメモに取り、脚本に活かしているのだという。「あからさまにメモを取ると不審がられるので、お店の紙ナプキンなどにこっそりと」という努力が、ドラマの臨場感につながっている。

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