再燃する2007年問題、先送りされた技能伝承、早急に対策実施が必要

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再燃する2007年問題、先送りされた技能伝承、早急に対策実施が必要

昨年3月、大震災に見舞われたエリアに拠点を持つ企業が、急きょ他の工場に生産を移管し、ほんの数週間で操業を開始、不足が懸念された製品供給を再開するという離れ業を見せた例が注目を集めた。化学品メーカーのカネカや富士通のPC組み立てラインなどがそうだ。

団塊世代の多くが定年を迎えた2007年、技術系労働者の一斉退職による技能伝承問題が懸念された。だがそのときは、大企業を先頭に5年間の定年延長が実施され、この「2007年問題」は先送りされた。

その定年延長が今年、5年を迎える。この5年間、前述のカネカや富士通などいくつかの大手は、現場作業のマニュアル化、映像化など、積極的な技能伝承策を実施し、ICTの導入、自動化・機械化などの対策を実施してきた。だが一方、「07年時点とまったく何も変わっていない」(素材メーカーの担当部長)と嘆く声も聞かれる。部品メーカー、化学メーカーなど多様な産業が現在、共通の悩みを抱える。

特に中堅以下の企業では、「ほとんど何も変わっておらず、技能者の高齢化だけが進んでいる状態」というところが非常に多い。建設など、下請けなどを含めた業界全体で、技術者の高齢化による人材不足が年々深刻化している業種もある。08年のリーマンショック以降は景気低迷から人員削減が進み、それに伴う外注化が進行したことも、社内の技術・技能喪失の一因となっている。

昨年9月、産業能率大学が実施した調査で、約60%の企業が、ベテラン従業員の定年退職により技能が失われることへの懸念を感じている。早急に打開策を講じないと、企業としての存続すら脅かしかねない。

 

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