再燃する2007年問題、先送りされた技能伝承、早急に対策実施が必要
現場と経営で危機感に乖離
07年問題が取りざたされた際、多くの企業でマニュアル化が行われた。だが現場では、マニュアル化し切れない要素も多い。たとえば気温や湿度によって溶剤の濃度や加える水の量を調整しなければならない紙製品やコンクリート建築の現場では、ベテランの技能者が勘を頼りに行っている部分が多い。だが、こうした言語化困難な“暗黙知”の部分を伝え切れていない場合が多い。そのため、品質の安定や製造過程でのトラブルにうまく対処できないという問題も浮上している。
人手不足の中、以前のように、若者が熟練者のそばで先輩の技術を盗むという余裕がなくなっている。加えて、「マニュアルに書いてあるとおりのことなら120点取れる出来だが、マニュアルにない不測の事態が起きたときや、新しいことをやらせようとすると、取り組む前にあきらめてしまう。進歩を望めない」と、ある資源系企業のOBは心配する。「指示されたとおりのことだけをやっていては、勘が働かなくなり、応用の利く人材は育てられない」と富士通総研産業事業部マネジングコンサルタントの野中帝二氏も指摘する。
一方、技能保有者からすると、若手への技能伝承に対するインセンティブがない。教えることに時間を取られ、作業の進行が遅れるのを嫌がることが少なくない。このため、技能伝承の必要性はわかっていても、現実には対処が進んでいないケースも多い。「このままでは技術・技能レベルが低下してしまう」という現場管理者の危機感は強い。だが、その声がなかなか経営陣には伝わらないのが現状だ。