再燃する2007年問題、先送りされた技能伝承、早急に対策実施が必要
BCPとしての技能伝承
「経営者側に、BCP(事業継続計画)の一環という認識が必要」と野中氏は言う。確かに、技能伝承を中期計画の中で経営課題として掲げる企業は少なくない。にもかかわらず、時間外に行われることも多い。技能伝承のための研修は、無報酬のうえ、評価面でのメリットが何もないケースが多い。技能者と若手双方の善意に依存するだけで、有効な課題解決には程遠い。現場が「技術伝承のため、ビデオを作りたい」と申請をしても決裁が下りない、などの例も見られる。
その一方、技能伝承チームを発足させた大手でさえ、できたビデオには若手が本当に必要とする暗黙知のレベルまでのノウハウを盛り込めず、現場のイメージビデオにとどまっているケースが多いという。組織の自己満足のためでなく、有効な技能継承のために何をすべきなのか。
まず、自社の持つ技術や技能を洗い出し、継承すべき暗黙知とマニュアル化できるものを分類し、系統立てて整理し、可視化する。技能者自身が、自分の持つ暗黙知の価値をわかっていないことも多く、骨の折れる作業だが、ここをおろそかにしていると、時間とコストが無駄になるばかりだ。次に、習熟度に合わせて段階的に評価する基準を作り、評価制度に取り入れる。一方、技能者への還元も必要だ。報酬面だけでなく、若手をきちんと育てればトラブルが減り、自分自身の仕事が楽になることを理解してもらう。