セールスプロモーションから始まった食堂
そもそも、象印が飲食店をオープンするきっかけとなったのは、炊飯器のセールスプロモーションだった。2016年に東京・表参道で、炊飯器のPR活動として簡易食堂をオープンしたのだ。
10日間、ごはんに合う和風おかずとけんちん汁、当時の最上位機種『極め羽釜』で炊いたごはんを提供したという。すると、価格が1000円と手頃なこともあって、用意していた100食が毎日完売した。
好評を受けて、2017年にも同じ表参道と、今度は大阪・梅田でも簡易食堂を10日間オープン。その際は、ごはんを「ふつう」「しゃっきり」「玄米」の3種類から選べる形にした。このときも、東京は1日150食、大阪は1日100食が完売。さらに、客から「こんなにおいしいんだから、常設店をつくってほしい」というラブコールをたくさん受けたそうだ。

他方、偶然の出会いもあった。現在の大阪店が入る「なんばスカイオ」のオーナーである南海電鉄の社員が食べにきて、「健康に寄与する和食テナント」として誘いを受けたのだ。
客からの要望と、南海電鉄からの誘い。その両方が追い風となって、象印は食堂づくりへのチャレンジを決めた。
最初の試みから10年近く経った2025年、象印食堂の月商は、大阪本店61席で約1500万円、東京店50席で約1900万円。11:00~15:00、17:00~21:00の8時間営業で回転数はそれぞれ4前後、平均客単価は2600円。飲食事業の売上高は、象印全体のわずか0.7%だ。
しかし、この「小さな投資」が生み出すマーケティング効果は計り知れない。

象印食堂では現在、使用している「炎舞炊き」のNW-FA型から、最新機種NX-AA型への変更を準備中だ。食堂用に特別改良し、25台の炊飯器の状態をタブレットで一元管理できるようプログラミングしている。
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