家電メーカーが、なぜ飲食店を手掛けるのか。飲食事業の責任者である、経営企画部 事業推進グループ長の北村充子さんに聞いた。

家電メーカーが挑んだ「体験価値創造」マーケティング
象印が経営する「象印食堂 大阪本店」は、大阪メトロなんば駅から徒歩5分、複合商業ビル6階にある。通りすがりで目に入る路面店ではないが、2018年のオープン以来、コロナ禍をのぞいてずっと“行列の店”だ。
2023年、JR東京駅から徒歩1分の商業施設「KITTE丸の内」5階にオープンした2号店も同様で、連日1時間以上の待ち列ができている。

客の中心は、生活に余裕があって食への意識が高い40、50代の女性だ。休日はファミリー、夜は仕事帰りのビジネスマンが「きちんとしたごはんを食べたい」と訪れることも多い。
彼・彼女たちの目当ては、ごはん。それも、象印が手掛ける炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」で炊いたごはんである。3種類を常備しており、すべて食べ放題となっている。
「『炎舞炊きのごはんが食べたい』『象印の最高機種の炊飯器のごはんがいかほどのものか知りたい』『もしおいしかったら家でも炎舞炊きを買いたい』などの目的で訪れる人が多いですね」(北村さん、以下「」内はすべて)
つまり、この店は「炎舞炊き」の価値を体験で伝えるセールスプロモーションの場なのだ。家電量販店の店頭説明やカタログでは、「ごはんの味の違い」はなかなか伝わらない。だが食堂なら、実際に食べてもらえる。
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