「通うのが楽しみに」団塊世代を惹きつける"料理特化型"デイサービスの全貌。《まるでおしゃれなカフェ》料理リハビリという新しい選択

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だが、一方でこんな側面もある。「料理に特化したデイサービス」のイメージから、「元気で介護度の軽い人しか参加できないのでは?」という先入観を持たれやすい点だ。

とくに要介護者やその家族に福祉サービスをつなぐケアマネジャーは、普段の要介護者の生活ぶりを見ているだけに、「この方は認知症もあるし、料理は無理かもしれない」「車椅子での調理は危ないのでは」と考え、「なないろの利用は難しい」と自ら判断してしまうこともある。

時折、飛び込みで見学に訪れた家族から、「なないろの存在を知っていたら、もっと早くから通えていたのに」と言われることもあるそうだ。

「お客様の8割が認知症を抱えていますが、皆さん長い間、主婦をされていた方が多いので、しばらくぶりの調理でも体が覚えているんですよね。驚くほど見事な包丁さばきをされる方もいらっしゃいます。

スタッフがそばでサポートしているので危険もないですし、逆にお客様から料理のコツを教えてもらうことも。認知症の方や車椅子、麻痺のある方でも安全に、楽しく料理に取り組めるという認識を、ケアマネジャーをはじめ、ご家族にも広げていく必要があると感じています」(神永さん)

この日作った料理
この日、参加者が作ったメニュー。毎回、全国のご当地メニューや世界各国の料理など、話題のグルメ・スイーツを作る。薄味すぎず、一般的な味付けや固さにすることで食が進む効果も(写真:SOYOKAZE提供)

「脱・介護保険」のサービス開発が急務

「年々、高齢者の割合が増える中、介護保険だけに依存するサービス設計は、今後の財政構造を考えれば持続的ではありません。

今、業界全体の課題として挙げられているのは、脱・介護保険。介護報酬に頼らない、自費サービスにつながるような魅力的な事業の開発が必要不可欠となっていくでしょう」(神永さん)

団塊世代が本格的に介護サービスを使い始める中、ただの「預かり型デイ」では満足できない層が確実に増えていく。

そのとき、高齢者自らが「通いたい」、あるいは家族が「通わせたい」と思えるような、魅力あるコンテンツやサービスを提供できるか? ソフト・ハード面での多彩なサービスの開発が各社求められている。

伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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