カラオケ衰退に同族経営の闇… シダックス"カリスマ創業者"が陥った「成功体験」という病
オイシックス側の狙いは、給食事業における人材不足や原材料費高騰といった困難な経営状況にあるシダックスのフードサービス事業を取り込み、自社が持つ食品流通やデジタル技術を駆使することで、給食業界の構造改革を推進することにあった。
さらに2024年1月、オイシックスがシダックスを連結子会社化し、事業効率化と新たな価値創造を目指した。同年2月には、志太氏自身もシダックス最高顧問を退任し、グループ役員を退いて顧問となるなど、経営の第一線から身を引いた。
オイシックスによる買収が示唆すること
オイシックスがシダックスに資本参加したことで、両社の経営方針には明確な違いが浮き彫りになった。
志太氏の経営は、トップダウン型による多角化経営による拡大路線が特徴であった。一方、オイシックスは、デジタル技術を駆使した効率化とデータに基づいた経営、そして既存事業の再構築による収益性改善を重視している。
オイシックスはシダックスの多角化戦略とは異なり、本業にリソースを集中投下し、厳しい市場環境に対応しようとしている。いわゆる「選択と集中」である。賛否の評価は分かれるが、M&Aや事業再編が活発化する現代においては、企業が競争力を向上させるために採用される経営手法の1つとして定着している。
このように、オイシックスによる経営体制への移行は、シダックスの事業ポートフォリオと経営哲学に根本的な変革をもたらした。これは、志太氏が築いた1つの時代が終わりを告げ、新たな経営戦略の下でシダックスが生まれ変わる過程であったといえよう。
2025年2月27日、オイシックス・ラ・大地は、グループ傘下となったシダックスとともに、オフィスビル内に入居している各企業の従業員が使える共同食堂を開設すると発表した。この食堂はシダックスが受託運営を担い、オイシックスが食材を提供する形式である。
志太勤氏の経営人生は、若き日の挫折から始まり、給食事業とカラオケ事業という2つの柱で一時代を築き上げた。しかし、その後は事業環境の変化と、シダックスにおけるコーポレート・ガバナンスをめぐる課題に直面し、最終的には他社の傘下に入るという結末を迎えた。
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