カラオケ衰退に同族経営の闇… シダックス"カリスマ創業者"が陥った「成功体験」という病

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに、急拡大していたカラオケ事業においても、社会環境の変化が経営に影を落とし始めた。インターネットの普及により、自宅で手軽に音楽を楽しめる環境が整い、カラオケボックスへ足を運ぶ機会が減少したのだ。とくに若者のカラオケ離れが顕著になった。

公益財団法人日本生産性本部が発行する『レジャー白書2020』によると、カラオケボックスの市場規模は、ピーク時の1990年代後半から2000年代初頭にかけて約6000億円規模を維持していたが、2010年代以降は下降傾向にあり、2019年には約3800億円まで縮小している。

これは、スマートフォンの普及によって、SNSや動画配信、オンラインゲームなど、自宅や手軽な場所で楽しめる多様なエンターテインメントが台頭し、若者層の可処分時間を奪った結果と推測される。シダックスは成熟市場となったカラオケ事業から2018年に撤退し、給食事業などに資源を集中させた。

ファミリービジネスが併せ持つ負の側面

事業の低迷に加えて、経営権をめぐる一族内での意見対立や、それに伴うコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する課題も、企業イメージに少なからず影響を与えた。

創業者のリーダーシップのもとで成長を遂げた企業が、その後の世代交代やコーポレート・ガバナンスの問題に直面することは珍しくない。志太勤氏から勤一氏への経営権移譲過程において、創業者と次世代リーダー間で経営戦略や事業運営に関する意見の相違が表面化し、社内の意思決定に混乱を招いた。

ファミリービジネス(同族企業)は、長期的な視点での経営や迅速な意思決定といった長所が経営学でも実証されている一方で、創業者のカリスマ性が強すぎると、その強さが逆に足かせになる場合もある。シダックスにもそのような弊害が見られた。

シダックスは、不採算店舗の閉鎖や、M&Aによる事業再編を図りつつ、健康志向の高まりに対応したヘルスケア関連事業や、地域の高齢者向け配食サービスなど、新たな成長分野への投資も行った。多角的な視点から事業ポートフォリオを見直し、新たな収益の柱を確立しようと試みた。だが、依然として厳しい経営環境が続き、抜本的な改革が求められていた。

そうした中、シダックスは2023年に入り、経営再建のためのパートナーを模索。そして、2023年11月、食材宅配大手オイシックス・ラ・大地が、シダックスの株式公開買い付け(TOB)を完了させ、シダックス株28%を取得し筆頭株主になった。友好的な合意が形成されたうえでの実施であり、敵対的買収ではなかった。

なお、2004年12月に東京証券取引所JASDAQ(現スタンダード市場)に上場したシダックスは、2024年3月に上場廃止となった。

次ページ両社の経営方針の明確な違い
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事