【夏ドラマ序盤の通信簿】春に続き不作?今年の「夏ドラ」が冴えない背景。《注目4作》は阿部サダヲ、中村アン、磯村勇斗、櫻井翔のあの作品
承認欲求とプライドは高いが優柔不断でだらしない“残念な夫”と、彼へのイライラが止まらず、日々“キレる妻”という衝突不可避な夫婦が、罵声が飛び交うケンカばかりの日常を乗り越えていく様を、リアリティたっぷりにおもしろおかしく描く。
小澤征悦と中村アンのほか、反抗期の高校1年生の娘・蝶子役の渡邉心結の芝居が光っている。どこにでもいそうな家族の日常の些細な出来事の風景に、どこか風情を感じてしまう。そんなストーリーと芝居の力が宿る、共感と感情移入しかない家族の物語だ。
「学園ドラマ」「刑事ドラマ」にも注目作品が
そのほかの注目作は、人気ジャンルである学園ドラマと刑事ドラマから、『僕達はまだその星の校則を知らない』と『放送局占拠』。
昨今の学園ドラマが映す、いまふうの教師像の潮流に乗りながらも、新たな風を吹かせそうなのが前者。磯村勇斗演じるスクールロイヤーが主人公になり、法律や校則では解決できない若者たちの青春に、不器用ながらも必死に向き合っていく。そのストーリーには、文学と哲学の要素がにじむ。
1話では、学校という閉じた社会のなかの主人公の弱さと無力さがまざまざと映し出され、何もできずに打ちひしがれたように下を向く姿には、ヒリつくような現実があった。
そのリアルのなかで、スクールロイヤーが高校生たちに何を伝えて、何を残すのか。その視点から、現代社会のなかの学校はどう映るのか。今期もっとも目が離せない、社会性の高いドラマだ。

後者の『放送局占拠』は、櫻井翔主演の大人気シリーズ第3弾だ。
凶悪犯による立てこもり事件に毎回家族とともに巻き込まれる熱血刑事が、犯人グループの要求に対峙するサスペンスアクション・エンターテインメントだが、とにかくコテコテのベタ。真面目な刑事ドラマでありながら、コントでもある。そんな作りになっているのだ。
それを象徴するのが、これまでのシリーズで鉄板ネタになっている櫻井翔のセリフ「うそだろ……」。視聴者が毎話楽しみに待つ“お約束”になり、制作陣もそれを意識して、各シーンにふんだんに入れ込んでいる。
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