国境地帯で見たミャンマー避難民支援活動。アメリカ政府の援助が途切れ、苦境に陥る医療。日本がつなぐ教育支援
とはいえ、 EHSSGはミャンマー支援を完全にストップしてはいない。2025年3月にミャンマー中部を襲った大地震でも、医療支援にかかわっている。
「直接現地に入ることはできないので、現地のパートナー団体を通じて地震後1カ月間にわたって水や食糧の配布をしました。しかし今も避難生活を送る人々は多数いて、仮設住宅の支援、被災者の心のケアなど課題は山積みです」(ソーターウェン氏)
特に問題なのが、糖尿病など持病を持つ人々の医薬品不足と、妊婦や乳児の衛生環境の劣悪さだという。マラリアなどの感染症のリスクも高まり、命に関わる状況が続いている。
しかし、ミャンマー国内では国軍や行政による支援は期待できない。資金的に苦しくても自分たちが動く必要があるという。
「そうした中で空爆が再開され、被災地にも爆弾が落とされている。軍は明確に人命を脅かす存在です。怒りしかありません」(ソーターウェン氏)
今、頼れるのは「民間の善意」だけ
USAIDの支援を受けずに活動している団体も苦しい財政状態が続いている。筆者はメーソットにあるミャンマー人学校「Children Development Centre」(CDC)も訪問した。そこで学校地域連携・安全保護マネージャーを務めるノウブレイワーポー氏は、「アメリカの支援が止まったことが、他の民間の援助の減少につながらないか、そこを心配している」と話した。
学校が始まったのは1985年。当初は教師の子どもたちのための小さな保育園のようなものだったという。本格的にミャンマー人学校として運営を始めたのは1989年。当時は生徒が200人ほどだったが、2021年の軍事クーデター以降、ミャンマーからの避難民が急増し、それとともに生徒数は大きく増えているという。

現在、6歳未満の未就学児を含めて約1200人のミャンマー人の子どもたちが学んでいる。ここに子どもを預ける親の多くはミャンマーからの避難民で、日雇いや不安定な仕事で何とか生計を立てている。学費を滞納している生徒も多く、学校は外部からの寄付に頼って運営を続けてきた。
「先生の給料さえ十分に払えないこともあります。それでも子どもたちの学び場を絶やすわけにはいかないのです」
ノウブレイワーポー氏はそう語り、深いため息をついた。
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