シャープに1300億円出資する台湾・鴻海の正体 提携でアップルと日本を囲い込み
その鴻海が唯一食い込めていないトップメーカーが、韓国サムスン電子だ。サムスンはテレビで圧倒的な世界シェアを誇るが、生産は基本的に内製。鴻海の付け入る隙はまったくなかった。一方で世界のテレビ市場は今後も、新興国を中心に安定的な拡大が見込まれる。テレビ市場においてサムスンと付き合わずに儲ける仕組みを考えた結果が、今回のシャープとの提携に繋がった。
■提携でアップルと日本を囲い込み
鴻海とシャープとのタッグで生まれるもの、それは世界最大級のテレビ生産のサプライチェーンだ。鴻海は中国を中心とする世界各国に巨大工場を構え、60万人に上る労務人員を有する。金型さえあれば、基本的にどの工場でもテレビを組み立てることができる。
一方、シャープの堺工場は「第10世代」と呼ばれる大型液晶パネルを生産できる世界最先端の生産拠点。これまでは需要の不安定による稼働率の低下で赤字を垂れ流してきたが、稼働率を最大限に高めることさえできれば、円高下においてもコスト競争力を発揮できる余地がある。堺で生産した大量の液晶を鴻海がテレビに組み立てれば、コスト面でも、世界各国市場へのデリバリー力の面でも強みがある。
日台の強力なタッグに欠けた最後のピース、それは顧客だ。おそらく鴻海の郭董事長は、こう勝利の方程式を描いていることだろう。ひとつは現在の最大顧客であるアップルのテレビ市場への本格参入だ。アイフォーン、アイパッドは言い換えれば、同じ「iOS」(OS=基本ソフト)を異なるサイズの液晶で製品化したもの。この先にはさらに大型のテレビと同等のディスプレイを搭載した製品の投入がある--と業界ではささやかれている。その需要を鴻海は決して逃さないだろう。