シャープに1300億円出資する台湾・鴻海の正体 提携でアップルと日本を囲い込み
「どんな製品でも世界首位は儲かる。2位ならそこそこの黒字、3位なら収支均衡。それ以下は赤字だ」。つまり、製品の別を問わずトップまたは2位メーカーを顧客とすることで、浮沈の激しい電機業界において生き残ってきたのだ。そして、狙いを定めた企業に食い込むために鴻海が示す“献身”にはすさまじいものがある。
たとえば05年、当時携帯電話の世界2位だった米モトローラがヒット機種の大幅増産を決めた際、鴻海はドイツで高額の射出成型機40台を買い付け、さらに軍用機で空輸して中国にモトローラ専用の増産ラインを立ち上げた。
また、テレビやゲーム機、パソコンを受託し関係の深いソニーに対しては、アセットライト経営を推進したいソニーの意向を受けて、南米のテレビ工場を人員ごと“お買い上げ”している。近年ではドイツの流通大手と合弁で中国で家電量販チェーンも経営しているが、これも流通在庫がかさみやすい中国リスクから優良顧客を守るための“サービス”といえる。
一方で、いくら大手の一角であっても、世界首位級でないメーカーには見向きもしない。たとえば07年ごろ、日本のある大手携帯電話メーカーが鴻海との取引を希望したが、「生産量が少なすぎる」との理由でけんもほろろに断っている。