【25年上期の「映画興行収入TOP10」】ヒット傾向は前年から一変! 『国宝』の特大ヒットなど邦画実写は大健闘 “洋画が復調”の背景は?

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もうひとつの泣ける映画のロングヒットが、30億円の手前まで迫った『ファーストキス 1ST KISS』。こちらは坂元裕二脚本のブランド力と認知度がもともとあった。そのベースに加えて、観客の琴線に触れる作品力が口コミで一般層に広がり、息の長い興行につながった。

映画『ファーストキス 1ST KISS』
(画像:映画『ファーストキス 1ST KISS』公式Xより)

この上半期で、泣ける映画の口コミによるロングヒットが立て続けに2作出てきたことが興味深い。若い世代の観客の間で、そういった作品への感度が高まっているとすれば、エンターテインメント大作ばかりでなく、オリジナル企画など小規模な独立系映画からのヒット作の数が増え、そのヒット規模も大きくなっていくかもしれない。

それはより多様な作品が市場に出てくることにつながる。映画業界にとって重要な意味を持つ動向になるだろう。

映画ジャーナリストの大高宏雄氏は、上半期の特徴として『国宝』をはじめとする邦画実写の健闘を挙げる。

「『国宝』の特大ヒットが最大のトピックと言っていい。10億円を超える破格の製作費、邦画大手ではない製作の主体、歌舞伎を題材にした内容面など、邦画としては稀な、実にチャレンジングな作られ方であった。そして、広範囲にわたる圧倒的な評価が、興行面でムーブメントを作った。近年のヒットの大きな理由となるネットやSNSでの情報の拡散が、これまでとは質も量もまったく違う広がり方を見せた点も見逃せない。それは、歌舞伎という神秘性をもつ伝統芸術の真髄が、日本人の魂に強烈に刺さったからではないか。上半期は、『国宝』をはじめ、『はたらく細胞』『366日』など予想を覆す邦画実写作品の大ヒット作が何本も生まれた。シリーズものではないことも、企画の幅を大いに広げたと思う」(大高氏)

上半期で昨年の30億円超え本数を超えた洋画

今年上半期のもうひとつの特徴は洋画が好調なこと。昨年上半期は30億円超えが1本、10億円超えが5本だったが、今年は30億円超え4本、10億円超え9本。TOP10内の洋画の存在感がまったく違う。

昨年の洋画の年間30億円超えは3本だが、今年は上半期ですでにその数を上回っている。また、10億円超えは、昨年の10本に対して、上半期であと1本に迫り、6月末公開の『F1/エフワン』(公開2週で9.7億円)を含めれば、同数になる。

そんな攻勢の背景には、いくつかのポイントがある。ひとつはディズニーの復調だ。コロナ禍以降、不振を極めていたディズニーだが、昨年の『インサイド・ヘッド2』(53.6億円)で約5年ぶりの50億円超えヒットを生み出し、今年も『モアナと伝説の海2』(51.7億円)、20億円超えの『リロ&スティッチ』とその流れが続いている。

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