商品勉強会もしばしば開催されており、新製品が出れば試食して、「自分の言葉でおすすめできるようにする」トレーニングも随時実施している。こうした姿勢がチョコレートの品質とともに、顧客の安心感と信頼感につながっているのだ。

楽しみ方と、楽しむ人の輪を広げる挑戦を
2020年からはじまった新業態、ゴディバ カフェ、ゴディパン、ゴディバ クレープ、そしてゴディバターの業績はいずれも好調だ。特にカフェは、連日行列の人気ぶり。関東で9店舗を展開するまでに成長し、2025年2月には関西に出店を果たした。ブランドを変えての「日常使い」へのアプローチは、成功を収めたといっていいのではないか。

むろん環境による市場変化による課題は、ゴディバだけが直面している課題ではない。チョコレート業界全体で、従来のチョコレートの枠を超えた商品開発が活発化している。「チョコレートは非常に面白い素材なんです」と奥村さんは微笑む。
「焼き菓子にしたりアイスにしたり、溶かしたらドリンクにもなる。他の素材との組み合わせによっても、バラエティ豊かな表情が楽しめるのが魅力です。だから気候の変化にも強いんです」
この言葉通り、多くのチョコレートブランドの商品が多様化しているそうだ。それに伴い、消費者のチョコレートの選択肢は格段に増えた。「これは高いけどちょっと自分のご褒美に買おう」「あれはみんなで分けるように買おう」と、用途とお財布事情に合わせて選べる幅が広がったのだ。
結果として、原料価格高騰の影響を受けながらも、チョコレート市場は大きなダメージを回避している。ただし、業界内の競争は激化している。
生き残りのために、マーケットのトレンドと日本の市場、生活スタイルの変化をよく観察しながら、「どこに機会があるのか」「どんなタイミングがいいのか」を中長期的に見極めていく構えだ。
「社内で議論を重ね、市場の流れに則ったチャレンジを続けていきます。そのなかで、チョコレートそのものの楽しみ方、楽しむ人の輪をもっと広げていきたい」と意気込む。

変化の激しい時代において、老舗ブランドがサスティナブルであるためには、時に自らのアイデンティティを一度解体し、新たな人格を創造する勇気が必要なのかもしれない。
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