「既存の政党や政治家は、私のような人間を気にかけていない」と感じている日本人の割合が7割に上るという世論調査の結果とポピュリズムの手法の深い結び付きについてはすでに述べたが、もう1つ重要な要素がある。
加速する孤立の時代における「コミュニティの誘惑」だ。経済学者のノリーナ・ハーツは、世界的なポピュリズム拡大の動きについて、「かつてなら労働組合や伝統的な政党、教会、さらには賑やかなコミュニティーセンターや地元のカフェが提供してくれたかもしれない目的意識やコミュニティー」を、ポピュリスト政党が与えている現実をさまざまな事例から浮き彫りにした(『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』藤原朝子訳、ダイヤモンド社)。
同書で紹介されるフランスの極右ポピュリズム政党「国民連合」の青年組織の主要メンバーであるエリックは、「1年半前から、夕食会やパーティーに出かけるようになった。
正式には委員会だが、党員の親睦会のようなものだ。みんなとても感じがいい」「コミュニティーの一員だと感じられるからね」などと話し、一緒にポスターやチラシを配る活動がいかに大きな喜びを与えてくれるかを吐露したという。
不信感を募らせた人々の心を上手く掴んだ参政党
参政党は、コロナ禍で政府の新型コロナウイルス対策やワクチン政策などに不信感を募らせた人々の心を上手く掴み、その支持基盤を拡大させていった経緯がある。
街頭演説のYouTubeで参政党を知った30代の主婦は、コロナ騒動に違和感を持ったことがきっかけだったと言う。「党員のほとんどがマスクをせずに過ごすことが多く、パンデミックの世界にいることを忘れるような空間が本当に気持ちがよい」と感じたことや、党員に共通する特徴に「今まで政治に興味がなかった」「日本をよくしたい」という人が多いことなどを率直に語っている(利倉みな『政治に全く興味がなかった主婦が参政党の党員になったら価値観が変わった』)。
政治活動を通して初めて連帯感や共同性に触れられたことが推察できるエピソードだ。
ハーツの孤独の定義は、友達の間で孤立しているとか地域社会とつながりがないといった分かりやすい感覚だけではないと述べ、「自分の声に耳を傾けてもらえていない。あるいは他人に理解されていないという感覚も含まれる」という(前掲書)。
政府や既成政党から「無視されている」「見捨てられている」という感覚を持つ人々にとって、ポピュリズム政党が居心地のよいホームになるのだ。
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