拷問や強制失踪が横行・・・ 「軍事政権に壊された家族」描くブラジル映画『アイム・スティル・ヒア』 “賞レースの顔”となった本作の凄さとは
2022年に行われた大統領選では、大統領がボルソナーロから、左派のルラに変わったが、その結果をめぐって右派と左派の対立が深まるなど、世の中が不安な状況に陥っている。
そしてその後、ボルソナーロによるクーデター未遂疑惑が報じられたことも、軍事独裁政権時代の生々しい記憶を呼び起こし、本作への関心を高めたきっかけにもなった。
「この映画を形にする7年間の間、ブラジル社会は再び過去の暗い影へと危うく傾いた。まさにその現実が、この物語を“今”語らねばならないという切迫感を、わたしにいっそう強く抱かせた」
ブラジルを代表する名女優の演技にも要注目
主人公エウニセを演じたフェルナンダ・トーレスは、サレス監督が「共にこの作品をつくったもうひとりの作家」と絶大な信頼を寄せるブラジルを代表する名女優。彼女の静かな怒りと悲しみをたたえた演技は多くの観客の心を打ち、アカデミー主演女優賞へのノミネートをはじめ、数々の映画賞をにぎわせた。
そして今年1月に行われたゴールデングローブ賞ではドラマ部門の主演女優賞を獲得。その受賞スピーチで「この賞を母に捧げます」と涙を浮かべながら語ったトーレス。ちなみに母のフェルナンダ・モンテネグロもブラジルを代表する名女優で、本作にも重要なシーンに出演している。

くしくも母のフェルナンダ・モンテネグロも、サレス監督の『セントラル・ステーション』に主演。1999年のゴールデングローブ賞とアカデミー賞で、ブラジル人初となる主演女優賞にそれぞれノミネートされたが、惜しくも受賞は逃していた。それだけに時を超えて娘のトーレスがゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞したのは悲願だった。
授賞式の地に立ったトーレスが「母も25年前にこの場所に立っていました。そしてこれは、どんな困難なときでも芸術が人生を耐え抜くことができる証明なのです」と語った姿は、ブラジル国民をはじめ、多くの視聴者の感動を誘った。
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