拷問や強制失踪が横行・・・ 「軍事政権に壊された家族」描くブラジル映画『アイム・スティル・ヒア』 “賞レースの顔”となった本作の凄さとは

軍事独裁政権下のブラジル、家族の物語
1970年代ブラジル。軍事独裁政権によって突如、夫の身柄が拘束された。
妻は必死になって夫の行方を追い続けるが、その消息は絶たれたままだった。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、それでも彼女は夫の名を呼び続けた──。
本年度の第97回アメリカアカデミー賞で3部門(作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞)にノミネートされ、ブラジル映画として初となる国際長編映画賞を受賞。第81回ヴェネツィア国際映画祭では最優秀脚本賞を受賞した。
第82回ゴールデングローブ賞では、ドラマ部門で主演女優賞を受賞するなど、『ANORA アノーラ』『教皇選挙』などとともに、今年の映画界の賞レースの顔となったブラジル・フランス合作映画『アイム・スティル・ヒア』がいよいよ8月8日より劇場公開となる。
マルセロ・ルーベンス・パイヴァの同名の手記をもとに実写映画化したのはブラジル映画界の名匠ウォルター・サレス。ベルリン国際映画祭で金熊賞と主演女優賞(フェルナンダ・モンテネグロ)を受賞した1998年の『セントラル・ステーション』をはじめ、チェ・ゲバラの若き日の南米横断旅行を描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』、そして邦画『仄暗い水の底から』のアメリカ版リメイク作となる『ダーク・ウォーター』などで知られている。
そんな彼にとって本作は、ジャック・ケルアックの小説を映画化した2012年の『オン・ザ・ロード』以来、およそ12年ぶりの長編映画となる。
ワールドプレミア上映となった2024年の第81回ヴェネツィア国際映画祭では、上映後におよそ10分間にわたるスタンディングオベーションを受けるなど、高い評価を受けた。
本国ブラジルでは、軍事政権時代を賛美する極右勢力からの上映ボイコット運動も呼びかけられたが、彼らの目論見は外れる。結果、映画はSNSなどでも話題を集め、若者層をはじめとした幅広い層に広く訴求。歴史修正主義への強烈なカウンターとなった。
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