「監視されて幸せ?」中国とロシアで見えた“独裁と豊かさ”の不思議な関係とは?舛添要一と佐藤優が語る“21世紀の独裁”
信号で停車すると、信号機の横にあるディスプレイで秒単位のカウントダウンが始まります。つまり、あと何秒で発車できるかがわかるので、ドライバーがイライラすることもありません。信号制御システムは渋滞解消のみならず、事故防止にも貢献しているわけです。
小売販売でキャッシュレスの割合は83.4%
舛添さんが中国で経験されたキャッシュレスに関して言えば、やはりロシアでも現金をほとんど使いません。2023年の数字ですが、ロシアにおける小売販売でキャッシュレスの割合は、実に83.4%に上っています。
2014年に導入された「ミール(мир)」というロシア独自のカード決済システムがあります。
ウクライナ侵攻(2022年2月)にともなう西側諸国からの経済制裁で、ロシアではビザやマスターカードなど、国外で発行されたクレジットカードが使いにくくなりました。
そのため、ミールがロシア国内で急速に普及したのですが、パスポートや滞在証明書を添えて申請すれば、外国人旅行者でも簡単に取得できます。
それから監視カメラですね。これもモスクワだけで22万台以上が設置されているという報告があります。しかし市民からすれば、「監視カメラに見られて、何か困ることがあるのですか。私はありませんよ」といった具合で、監視社会への批判や不満の声は聞こえてきません。
舛添さんが「監視社会であるがゆえに先端技術が発達し、その技術のおこぼれにあずかった市民が喜んでいる」と言われたとおりです。ですから、人々の満足度という観点では、ロシアも中国と同等に高いと言えるのではないでしょうか。こうした現実を、私たちは等身大で直視しなければいけないと思います。
モスクワの街を歩くと、ゴミひとつ落ちていません。そして屋外広告が街頭から消えました。旧ソビエト連邦(以下、ソ連)時代にはアエロフロートなどの広告があったのに、今はまったくないのです。これには二つの意味があります。
ひとつは、街の景観を保全すること。もうひとつが、広告で人々の消費欲求を刺激する西側の経済と訣別するということです。
ウクライナとの戦争が始まってから、ロシアは西側諸国との経済関係を遮断しました。西側からの食料品輸入を禁止して、食料の生産と加工を国内で行なうようにしたのです。しかも、この食品のレベルが高くて美味しいうえに、添加物はほとんど入っていません。食品添加物の規制を非常に厳しくしたからです。買ってきたパンが3日で黴びるほどです。
純国産で無添加の食品を食べられるロシア人はこれを喜び、同時に「私たちは今まで、西側が生産したクスリ漬けのものを食べさせられていた」と気づきました。だから「当店では国産品しか扱いません」と謳う食料品店が続々と出現しています。
では、メイド・イン・ザ・ウェスト(西側)の製品はないのかと言えば、実はあります。メルセデス・ベンツでもBMWでも、新車が買えます。ロシアへの経済制裁で禁輸措置を講じているドイツの製品なのに、なぜロシアで流通しているのか。
それは、中東や中央アジア諸国を経由して入ってくるからです。そのぶん価格は高くなりますが、言い方を変えれば、カネさえ出せばどの国のものでも手に入る。モスクワには日本製の大福やキティちゃん人形、招き猫を扱う店まであります。
住宅価格も下がりました。2010年頃は、120㎡のマンションが日本円で1億円ぐらいしました。それが今は、地下鉄と高速道路を延伸したこともあって、モスクワ郊外でクレムリンから40分程度の立地なら1500万円で買えます。
日本で言うと、東京都心起点で浦和(埼玉県)、津田沼(千葉県)、あざみ野(神奈川県)といったところですね。しかも、国家がきわめて低利の住宅ローンを組んでいるため、20代で自分の家が持てるのです。
こうした意味で、ロシアの国民は困っていません。むしろ満足度が高まるとともに保守化しています。
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