「監視されて幸せ?」中国とロシアで見えた“独裁と豊かさ”の不思議な関係とは?舛添要一と佐藤優が語る“21世紀の独裁”
1989年にベルリンの壁が崩壊し、米ソ冷戦が終焉した時には、民主主義陣営のほうが人口が増えて大きくなったのに、現在は逆で、独裁=権威主義のほうが力を持ってきた。
今や世界人口の七割が権威主義国です。そしてむしろ、民主主義は機能不全を起こし、総体的に国民の不満が高まっています。民主主義陣営に住む者の1人として、反省しながら直視しなければならない現実だと思います。
ロシアも豊かになった──佐藤
代議制民主主義が機能不全を起こすいっぽう、権威主義国家が成長し、国民が豊かさを享受しているということですね。それについては、まったく同じ認識です。ロシアも中国のように豊かになっています。
私は2024年8月13日から19日まで、22年ぶりにモスクワを訪れました。市民の生活水準は明らかに東京よりも高く、治安も安定しています。深夜の1時~2時に街を歩いても、まるで心配がありません。レストランは営業していますし、地下鉄も動いています。むしろ東京・新宿の歌舞伎町のほうが怖いくらいです。
また、交通渋滞が起きません。かつて、モスクワは慢性的な交通渋滞に悩まされ、北京やサンパウロなどと並び「もっとも交通渋滞が深刻な都市」のひとつに挙げられていました。それが消えたのです。モスクワ市街を走る自動車の台数自体は相変わらず多いのに、悪名高かった渋滞が、なぜ今はなくなったのか。
それは「スマート信号システム」と呼ばれる先端技術を導入したからです。簡単に言うと、信号機と車両感知器をネットワークで結び、得られた交通情報をもとに信号待ちの時間が極小になるように信号機の明滅時間を調整するシステムです。
これで交差点での渋滞を抑制するのです。AIがマルコフ連鎖(現在の状態から次の状態を確率的に予測する数学モデル)を使って、このシステムを制御しているようです。