「監視されて幸せ?」中国とロシアで見えた“独裁と豊かさ”の不思議な関係とは?舛添要一と佐藤優が語る“21世紀の独裁”

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運転者は警察に行って罰金を支払わなければなりません。中国では2億台以上の監視カメラが稼働していると言われます。また、オンラインのスマホ決済と顔認証システムが進んでいるため、ビッグデータによる犯罪者の摘発も容易になりました。

では、そんな厳しい監視社会で、中国の市民は息苦しい生活を強いられているのかと思いきや、実状はまるで違いました。人々は監視カメラのおかげで泥棒がいなくなったことを非常に喜んでいますし、暮らしに必要なことは買い物をはじめ、ほぼスマホ1台で済ますことができます。

私が「スマホを使い慣れない高齢者はどうするのですか」と聞くと、顔認証で万事が対応可能ということでした。買い物なら、レジの顔認証端末で決済が完了します。システムに紐づけされた銀行口座から代金が引き落とされるのです。

「お客さん、現金はやめてください」

このように、中国はキャッシュレス社会に移行しています。タクシーに乗って現金で支払おうとすると、「お客さん、現金はやめてください」と言われます。なぜなら、お釣りの用意がないからです。例外は空港の免税店くらいでした。あ、香港だけは、なぜか現金社会ですね。

もちろん、キャッシュレス決済によるカネの流れは、中国当局が完全に捕捉しています。

しかし国民は、日常生活を送るうえで効率のいいシステムだと歓迎し、ハッピーなのです。

前述のように監視カメラで泥棒がいなくなっただけでなく、そもそもキャッシュレスで現金を手元に置かないから強盗に入られることもない。これもハッピーです。

当局の「監視」による独裁は、国民に便利さと治安の良さをもたらし、同時に独裁権力にとっても、効率的な思想・言論統制と国家統治の手段であるわけです。つまり、監視社会であるがゆえに先端技術が発達した。その技術のおこぼれにあずかった市民が喜んでいる──というのが、私の見立てです。

実際、突発的な殺人事件は別として、中国へ行くたびに治安の良さを実感します。独裁体制国家で国民が幸福を感じているという点において、中国人の満足度はきわめて高いのではないでしょうか。

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