日中百年の群像 革命いまだ成らず 上・下 譚璐美著
20世紀初頭、近代国家となった日本を見習い清朝打倒を目指した中国人たちを描いた長編である。辛亥革命の中心人物である孫文を核に黄興(こうこう)、章炳麟(しょうへいりん)、汪兆銘(おうちょうめい)、廖仲ガイ(りょうちゅう)などの革命派、康有為(こうゆうい)、梁啓超(りゅうけいちょう)などの立憲派、そして清朝のつわもの李鴻章(りこうしょう)が絡んで混沌たる革命劇が進行する。熱狂的支援者には日本人や世界各地の華僑もいた。読むほどに宮崎滔天、梅屋庄吉、頭山満、内田龍平らの支援がなければ革命がどうなっていたか想像が膨らむ。
筆致は柔らかく、人物それぞれの個性が浮き彫りにされて飽きさせない。特に孫文の魅力、人間性、そして心の葛藤が鮮やかに描かれている。清朝の官僚たちが旧体制とはいえ自国の権益を守るために諸外国の術策に抵抗する一件、革命派が軍資金不足に悩み資金調達に奔走する一部始終、孫文臨終の際の白紙委任状などユニークな指摘に事欠かない。第一級の歴史資料であるとともに文学的面白さに満ちた力作である。(純)
上 新潮社 1600円
下 新潮社 1600円
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