文学部がなくなる日 倉部史記著

 

大学の機能は、「教学」である。教育と学問だ。しかし現在の大学は広報・PRで勝負しているらしい。大学の広告は、電車内にもあるし、看板も目立つ。そして大学案内も華美なものになっている。

「オープンキャンパス」という高校生を集めるイベントも盛んだ。「5万人動員」というものもある。高校訪問も総力を振りしぼっている。職員だけでなく、教授・准教授まで駆り出されて高校を訪問して生徒集めに汗を流している。

入試にも工夫がある。全国の何カ所かの会場で筆記試験を実施する「サテライト入試」はすでに普及している方式だ。AO入試は、学力ではなく、面接などで人物を確認するが、受験生の在籍高校で面接試験が受けられる「デリバリー方式」も登場している。

第一章は30ページほどだが、大学が置かれた状況が要領よくまとめられている。この状況をマーケットとして捉えると、クレイジーだとわたしは考える。

第二章からは、個別の現象が紹介、分析されている。まず「変わっていく文学部」は、大学の学部の歴史的成立から紹介し、今日的な意味合いを解説し、意味不明な学部が多数生まれた背景を解説している。

意味不明な学部学科が多数生まれると、学士名も混乱する。もともと学士の種類は少なく、東京大学が1878年に定めた学士は、法学士、文学士、理学士、医学士、製薬士の5つしかなかった。次第に細分化され、1956年には29種類だった。

ところが91年に学士の種類に制限をなくしたことがきっかけになり、現在存在する学士は580種類以上。しかもその6割は、特定の大学にしかない「オンリーワン学士」。著者は「580種類の学位はもう、社会への証明としてほとんど意味をなしていません。オンリーワン学位はなおさらです。たとえば留学の際、海外の教育機関に提出する書類に学位名を記入しても、価値は認められない」と書いているが、その通りだろう。

学位名に限らず、世界の常識からかけ離れた非常識がまかり通っているのが日本の大学。本書によって大学が抱える問題が、大学関係者に共有され、改善されていくことを望みたい。

(HR総合調査研究所(HRプロ) ライター:佃光博=東洋経済HRオンライン)

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