大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 沢田健太著

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会社説明会についての解説では「どの会社の説明会もスマートで、手際よく進行する。聞く側としては、ひっかかりがない。質問する前に全部説明してくれる」、「なんの関係もない第三者がこの会場を覗いたら、あやしげな自己啓発セミナーが行われているのかと思ったっておかしくない」と書いている。

確かにそうかもしれない。就活・採活に関わっている人間(わたしもその一人)は、スマートで熱意にあふれる若手社員を前面に押し出して、学生の志望意欲をかき立てるのが、成功する会社説明会と思い込んでいる。しかし赤の他人が会場内に立ち入ったら、自己啓発セミナーの一種と勘違いしておかしくないだろう。

「人事マンが言いがちなセリフ」は7つのセリフを引用している。大半の採用担当者が1シーズン中に何度も使う常套句だと思う。そしてたくさんの応募者に来てもらいたいのは本当だろう。しかし学生に対してこれらのセリフを発することは、結果的にウソになっていないか?

「どんな方でもいらしてください」
「みなさんに来てもらいたいと思います」
「いろいろな人に来てもらいたいと思っています」
「就職活動に学校名は関係ありません」
「ありのままの自分を出してくださいね」
「出る杭を求めています!」
「オレも学生時代は勉強してなくて」
著者は学生に対し、こんな言葉を真に受けてはならないと言っている。

上記だけを読むと、誹謗中傷が多い書物と思うかもしれないが、そうではない。事実を伝えており、ぶっちゃけているが、誠実な書物で文章力も優れている。

わたしはこれまでこの種の本を読んで「だれのために書かれ、何を変えたいのか」と疑問を持つことがあったが、本書はキャリアセンターの職員、大学の教員・職員、人事、採用・就職支援業界の人、学生、学生の親のだれが読んでも、得られるものが多いと信じる。

ちなみに沢田健太はペンネームだ。さすがにこの内容を本名で書けなかったのだろう。読んだ印象では40代半ばの方のようだ。ペンネームのままでいいから、もっと書いてもらいたいと願う。

(HR総合調査研究所(HRプロ) ライター:佃光博=東洋経済HRオンライン)

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