英語が苦手な日本企業の救世主なるか。独DeepLが本格参戦、東証プライム上場企業の半数が採用する「翻訳AI」の実力に迫る
専門用語への対応は、DeepLの企業展開における重要な差別化要素となっている。「用語集」機能により、業界特有の専門用語を登録できる。コンサル業界での「クライアント」を「顧客」と訳すか、医療分野で「患者様」と訳すか。こうした使い分けが可能だ。
高山氏によれば、特に製造業や製薬業界では「英語として翻訳すれば意味は合っているが、その業界の人が見るとピンとこない」という用語が多数存在する。同社は製造・自動車、製薬・ライフサイエンス、法務・プロフェッショナルサービス、ITの4分野を重点領域として、業界特有の表現や文脈に対応した翻訳の精度向上を進めている。
さらに企業ごとの「スタイルとトーン」も反映できる。同じ内容でも、企業文化や顧客層に応じて表現を調整する必要があるが、DeepLではこうしたニュアンスの違いも用語集に登録して統一的に管理できるという。
生成AIとの差別化戦略
説明会後の質疑応答では、生成AIとの競合関係について活発な議論が交わされた。2023年以降、ChatGPTやClaudeなどの汎用生成AIが翻訳機能も備えるようになり、DeepLの成長に影響があるのではないかとの質問が出た。
これに対しDeepLの吉岡大地氏は「生成AIの登場でマーケット全体が大きくなった」と前向きに捉えていることを明かした。翻訳ツール自体は2000年代後半から存在していたが、AI技術の進化により「実用的な翻訳ができる」ことが広く認知され、市場が拡大しているという。
汎用LLMとの性能面での直接比較は避けつつも、DeepLの優位性として具体的な事例に言及した。パナソニック コネクトでは、生成AIで論文を英訳した際には修正箇所がわかりにくかったが、DeepLでは変更点や対応関係が明確に表示され、効率的な校正が可能になった。従来の校正サービスと比較すると5〜6倍の改善点を発見できるようになったという。

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