【生ける伝説】フランシス・フォード・コッポラ監督 『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』華々しいキャリアの一方、自己破産もした激動人生
――コッポラ監督は“仕事”をどう捉えているのでしょうか?

それは興味深いところだが、自分は仕事というのをふたつに分けている。好きでやる仕事はプレイ(楽しみ)、嫌いな仕事、それをあえて苦役と呼んでみるわけですが、こっちのほうは心配しなくていいです。今はロボットというものが発明されているので、苦役は彼に任せてしまえばいい。わたしはプレイ、楽しみのほうだけやるようにしたいと思っている。
たとえば、世の中のすばらしい発明というものは、子どもと遊んでいるときに生まれるものが多いですよね。やはりそうしたところからアイデアというのは生まれてくるんだと思う。
最愛の妻に捧げる「構想40年の大作」
――本作は2024年に逝去した妻のエレノアさんに捧げられています。本作の構想は40年ということなので、エレノアさんと本作の話などをされたこともあったかと思いますが、あらためてエレノアさんへの思いを教えてください。
エレノアはわたしの初めての、そして最後の、62年連れ添った妻だった。そしてわたしの子どもたちの母であり、友人でもあった。彼女自身、映画作家でありアーティストだった。ですからもちろん彼女とこの映画の話もしていたし、応援もしてくれた。
彼女はわたしがリスクを顧みない人間だっていうことはよくわかっていた。わたしの考えは、人生を最大限にやりきるということ。死ぬ間際にあれをやっておけばよかったというのではなく、あれをやっておいてよかったと思いたい。それがわたしの信条だということを妻もわかってくれていた。
わたしにはひ孫がいるんだが、可能ならばよい世界を次世代に残してあげたい。今がヒドい世の中ならば、わたしたちが手を尽くして、今後、よい世界にしなくてはならない。
わたしがこの映画を妻に捧げた思いの一端はつまり自分の子どもだけじゃなく、すべての子どもたちが自分たちの世代の子どもたちのためであるということ。
子どもたちの中には将来の黒沢、アインシュタイン、モーツァルト、三島といったアーティストや科学者がいるかもしれない。だから次世代のためによりよい世界を築きたいという思いをいつも共有しているので、その言葉に込めています。

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