メルボルン鉄道旅「交通費1日1000円以下」で満喫 「物価高で海外旅行ができない」は大きな誤解だ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

格安旅に慣れれば、海外旅行も気楽なものとなるのだが、このような宿泊施設で日本人に出会うことがめっきり減ってしまった。アジア人は多いのだが、中国、韓国、台湾、香港からの利用者である。

筆者が思うに、日本人は賃金安や円安などから、貧乏な国になったといわれるが、旅行に求める条件はバブル期と変わっていないと感じる。飛行機は10時間も乗るなら直行便、できればビジネスクラス、せめてプレミアムエコノミー、できるだけ日系の航空会社。宿は個室。せっかくの海外旅行なのだからお洒落なレストランで食事を……。しかし、こんな旅行をしていたら、現在の日本円に換算したら大きな額になり、かなり経済的に余裕がなければ海外旅行などできないであろう。

筆者が鉄道旅行を始めたのは中学生のときで、ユースホステル協会の会員になり、シーツすら持参して旅をした。ユースホステルでは食事は出るものの、お皿などは自分で洗う必要があった。宿のペアレント(マネージャー)には「来たときよりも美しく」と教えられたので、高齢になった今でもこういった格安旅は平気なのだが、現在は多くの旅行者が子供の頃から立派なホテルに泊まり慣れてしまったのか、旅行イコール贅沢になっているのかもしれない。しかし、アジア各国からやってきた旅行客はみな格安旅行に慣れている。主要国で格安旅行に最も慣れていないのが日本人と感じる。

日本は「みんな同じ」が大好きで、「暗黙のルール」が存在し、息苦しさを感じることがあるが、海外のゲストハウスではさまざまな人が同室となり、彼らは自由である。果たして日本人は「この雰囲気になじめるのか」と疑問に思うこともある。

【この記事の写真をすべて見る】「物価高で海外旅行ができない」は大きな誤解。オーストラリアでは州が異なると別の国といってもよさそうなくらい鉄道の車両やシステムも違っている。メルボルンではどんな鉄道旅が待っているのだろうか。

現地でやりたいことがあるか

ほかにも問題がある。海外のゲストハウスでは時間がゆっくり、のんびり流れていると感じる。こういった宿は2~3日の滞在というような弾丸旅行などには向かない。日本人の「休暇が取れない」は海外でも知られていて、とにかく日本人にはゆとりを感じない。時間にゆとりがあれば、旅行する気分にもなるのではないかと感じるのだが。

さらに、格安旅行をしてでも、現地でやりたいことがあるかどうかも大切であろう(筆者は鉄道旅行をしたい)。そして、少なくとも、鉄道旅行が目的であれば、海外の物価高は怖くないと感じるので、海外鉄道旅をもっと楽しんでもらいたいと感じる。鉄道旅行だけでなく、趣味を持つことの大切さも感じる。目的があれば出かけたくなるというものである。

この記事の画像を見る(44枚)
谷川 一巳 交通ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事