「余ったパンを捨てない」超人気パン屋ドリアンの店主が打ち出した"80点のパンを売る"製法を手抜きする"の深い意味

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そして、これは、パン屋だけでなく、他の仕事にも共通するのかもしれないぞとも思いました。

だったら、まず自分の店で証明するべし。そして、帰国してお店を再開するときに、次のように「手抜き宣言」をしたのです。

「手抜き宣言」の中身

「種類も、製法も、売り方も、営業時間も手を抜きます。でもそのかわり、材料はベストのものです。粉は国産の有機栽培のもの、有機がなければ減農薬のものを使います。天然酵母で発酵させ、薪窯で焼くのも材料の一部と考えてのこと。

もちろん材料代は倍以上に高いです。でもそれでも手間暇かけて、人手もかけてつくるより、はるかに安くつくれます。お客さまは、良い材料のパンを食べられます。当店としては、今までよりも美味しいパンを、安く、楽に、つくれます」

種類はカンパーニュなど2種類だけで具は入れません。そして、大きいパンだけを焼きます。

だからたくさんのパンを焼いてもつくるのは僕1人だけです。適当にこねて、どかっと丸めて、冷蔵庫に入れたらそれでOK。4〜12時で仕事を終えて家に帰ります。そして12~18時まで妻が店頭で売ります。

「グラッガー」の5時間労働とまではいかないけれど、しっかりじっくり8時間労働です。以前の働き方とは、心の穏やかさがまったく違います。

粉の値段は、それまで使っていたものの2倍です。それでも、人も時間も浪費してつくるより、はるかに安いのです。その結果、お客さんは、良い材料の美味しいパンを安く食べられます。

大きく具の入っていないパンは日持ちするので、売れ残ったパンも翌日割引して売ります。買ったお客さんも冷蔵庫に入れておくだけで、1カ月近く食べられます。

手抜きをしたパンは、つくり手も、お客さんも、農家さんも、その周りの人も、みんながうれしい方法だったのです。

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