「余ったパンを捨てない」超人気パン屋ドリアンの店主が打ち出した"80点のパンを売る"製法を手抜きする"の深い意味

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

売れないわけではないのですが、でも何かが持続可能ではないと思いました。自分もスタッフもつねに消耗して走り続けているようでした。

そうではなくて「やればやるほど満たされ、元気になる」、そんな働き方はないのだろうか?

そんなことをもんもんと考えていた2011年、35歳のとき、転機が訪れたのです。

2008年の夏に1カ月間研修させてもらったことのあるフランス、ル・マン近郊のパン屋「フーニル・ド・セードル」に暑中見舞いを出したら、「フランスで働きたい日本人を探してくれない?」という返事が来たのです。

「自分が行きたいです!!」とメールしました。

新しい働き方のヒント

2008年に研修したとき、確かにパンづくりも感動的だったけれど、何よりも、暮らし方に衝撃を受けました。当時のうちの3倍ほどパンを焼いていても時間の流れがゆったりで、どんなに忙しそうでも食事はゆっくり食べる。ゆとりがありました。

「なぜだ?!」と不思議でした。

やっぱりそこに、もんもんと考え続けていた、新しい働き方のヒントがあるはず。そう考えて、結婚したばかりの妻と2人で、1年間じっくり住んで、とにかく「働き方、暮らし方、生き方を盗んでくる!」と決意したのです。

フーニル・ド・セードルのご夫婦が奔走してくださったものの、労働ビザが下りず、結局、学生ビザで“潜入”することにしました。フランス西部の町、ナントにあるナント大学付属の語学学校に入学して無事ビザをゲットしました。

しかし、ナントは、フーニル・ド・セードルのある村からは、TGV(フランスの高速鉄道)で2時間離れています。そこで作戦を変更して、ナントを拠点に、学校の休みのたびに、フーニル・ド・セードルを含めて、いろんなお店で研修させてもらうことにしたのです。

結果的には、そのおかげで衝撃的なお店に出合えたのです!

1軒目、2軒目とフランスのパン屋で学び、3軒目は、パン文化研究家の舟田詠子先生に紹介していただき、オーストリア・ウィーンにある「グラッガー」というお店で研修できることになりました。

「明日からお願いします!」と言うと、店主のグラッガーさんは、「じゃあ、明日の8時に来てね」ということでした。それまでの僕のパン屋常識では、朝8時に工房に行くと、帰るのは早くて夕方です。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事