「余ったパンを捨てない」超人気パン屋ドリアンの店主が打ち出した"80点のパンを売る"製法を手抜きする"の深い意味

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「もしかしたら、19時や20時になるかも……」

そんな覚悟をして翌日お店に行くと、お昼を過ぎた頃、教えてくれていた若手職人のデニスくんが、「じゃあ、また明日!」と言って、ピューッと工房を出て行ってしまい、僕たち夫婦はその場に取り残されてしまいました。

さすがにまだ早すぎるから、何かの聞き間違いかなと思ってウロウロしていたら、窯でパンを焼く係のベテランのバルタンさんが、「もう終わりだよ、帰っていいんだよ〜」と教えてくれたのでした。

え、マジですか? まだ12時過ぎですけど……。労働時間4時間ですよ……。

「君たちが手伝ってくれたから少し早く終わったけど、8時出社の人は、13時には終わりだよ」

それでも5時間です。

翌日もその次の日も、お昼には仕事が終わってしまいました。

手を抜いて働く

話を聞いたり、観察したりしてわかったのは、彼らのパンは日本的にいうと手抜きだということ。

大きなパンや、中に具の入っていないシンプルなパンばかりです。こね上げたら、すぐさま成形して、冷蔵庫にしまって終わりです。発酵もざっくりな感じです。そして翌日に焼きます。

でも、製法で手を抜く代わりに、材料は手に入る最高のものを使い、天然酵母で醸して、薪で焼いているのです。

何より、食べてみると、そのパンは日本のどのパンよりも断然に美味しかったのです。「力が違う!」。

それに比べて、日本での僕は睡眠もそこそこに18時間も働いて、スタッフにもドタバタ働かせて、できたパンは、ここよりまずいのです。

何やってたんだろう……。手をかければかけるほど、良いパンが焼けると思っていた。でもそれは違っていた。

手をかけ、時間をかけ、B級の材料を使うより、手を抜いて最高級の材料を使うほうが、つくるのもラクで値段も安く、そのうえ断然美味しいことに気づいたのです。

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