さらに驚くべきは、黒田総裁が原油価格の下落を予想できなかったと、言い訳を繰り返している点です。これは、日銀が基本的なマクロ経済の分析ができないといっているのに等しいのです。原油安を予想できなかった日銀は、無能だといわれても仕方がないわけです。
100歩譲って、たとえ日銀にとって原油価格の下落が想定外だったとしても、新しい指数でさえ物価目標2%を達成することができていません。それにもかかわらず、目標の未達成を原油安のせいにして説明するのは、まったく説得力がなく、かつ不誠実な対応であると思われます。
いずれにしても、日銀の2年以内に2%を達成するとしたインフレ目標は、完全に失敗することとなりました。たとえ達成の期限を先延ばしたとしても、たとえ追加緩和を実施したとしても、結局のところまた失敗するのは避けられないでしょう。
国民は物価目標に違和感を覚えている
日銀が異次元緩和に失敗した理由は、日本国民がインフレを望んでいないという価値観を理解していなかったということであると思います。ほとんどの日本国民は日銀の物価目標に違和感を覚えているし、インフレに期待するよりも失望するという国民性を持っているわけです。
日銀も認めているように、エネルギー輸入国である日本の経済にとって、原油価格の下落は明らかにプラスとして働きます。ところが、そのプラスの材料が日銀の政策目標から見れば大きな逆風になるという矛盾は、日銀の掲げる金融政策が的外れであるという事実を示しています。
また、同じ的外れな経済政策であるアベノミクスが始まって早くも2年10カ月が過ぎようとしていますが、その実態はというと、円安や株高によって大企業や富裕層が潤った一方で、国民生活は悪化し続けてきたということに尽きるでしょう。国民経済の視点から見れば、アベノミクスは完全に失敗に終わっていたわけです。
そのような経済失政にもかかわらず、2015年9月に自民党総裁に再任されたばかりの安倍首相は、わざわざ記者会見まで開いて、「アベノミクスは第2ステージに入る」と訴え、「新しい3本の矢」を実行していくと力説しています。新しい3本の矢とは、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障だということです。
しかしこれは、金融緩和を中心に据えた「従来の3本の矢」の失敗を総括することなく、経済失政の責任問題が浮上する前に「新しい3本の矢」をすり替えたというのが実情ではないでしょうか。
日銀が政策目標における「新指数」をつくって、メディアからの責任追及を逃れようとしたのと同様に、政府までもが「新しい3本の矢」をつくって、経済失政をごまかそうとしているわけです。このような無責任な体質では、国民のほとんどがもはや政府や日銀を信用することができなくなるでしょう。
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