「思ってた内容と違う…!」「グロいのに号泣した」賛否が噴出している“異色のハリウッド映画”『サブスタンス』の何が凄いのか
主演のデミは映画のパンフレットで「この映画に込められているメッセージの中で最もパワフルで美しいものは、『ありのままの自分を受け入れることの大切さ』だと思う」と語っている。

「ありのまま」といえば、アニメーション映画『アナと雪の女王』(2014年)で大流行した概念。それをアップデートしたのが『サブスタンス』だ。
エリザベスは、自身の美醜も老化も、ありのままの自分を受け入れる過程は、見事な悲喜劇であり、神話の誕生と言ってもいい。
この映画に拒否反応を感じる人は、グロテスクな表現が苦手である人もいるだろうけれど、「ありのまま」の自分を認めることに抗っている人もいるのではないだろうか。年齢も美醜も、劣化も、認めることはとても怖い。
老いたエリザベスVS若く美しいスーという構造のようで、サブスタンスを提供する側は、一貫してどっちも自分だと言っている。「サブスタンス」という意味が「物質」や「本質」「価値」という意味でもあって、そのものずばり、自身のありのままの本質に気づくという非常によくできた脚本(さすがカンヌ映画祭脚本賞)なのである。
結局、価値観には絶対なんてない
アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞している。それは特殊メイクなのか、エリザベスとスーの美しいヘアメイクのほうなのかどっちなのだろう。モンスター的な特殊メイクと美人女優の華やかなヘアメイクが融合したところもあって、その辺のセンスにもユーモアを感じ、じつに愛おしい映画である。

また、おもしろいのは、最高に美しいと称賛されるスーの前歯がややすきっ歯であること。彼女の美は決して完璧ではないのだ。なかにはその歯でいいのかと疑問に思う人もいると思うが、そういう歯はたまらなく魅力的に思える人もいるようで。結局、価値観には絶対なんてない。そう思って勇気が出る。
「きれいは汚い、汚いはきれい」はシェイクスピアの『マクベス』に出てくる魔女のセリフだが、エリザベスはまさにそれ。女の中の魔女性をここまでぶっ飛んだ表現で描いてみせた。
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