「思ってた内容と違う…!」「グロいのに号泣した」賛否が噴出している“異色のハリウッド映画”『サブスタンス』の何が凄いのか

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スーの欲望はどんどん膨れ上がり、それと同時にエリザベスの肉体はどんどん変容していく。たとえば、エナジードリンクは、飲むと元気を得られるが、もともとないものをプラスにするわけではなく、もともと持っているエネルギーを瞬時に活性化しているだけなので、肉体に負荷がかかる。

それに近いのかなと筆者は想像したのだが、スーはエリザベスのポテンシャルを一気に最大限に燃やし尽くして輝く産物なので、エリザベスは消費されて衰えていく。

劣化や老化という概念を超えて凄まじく変貌していくエリザベス。細胞レベルになってしまうという感じで、例えるなら、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」をグロテスクにしたような感じになっていく。

物語はここからが本番と言っていい。エリザベスが自身の肉体の限界に直面した、そこからが面白い。ただし、グロテスクなものが苦手な人は要注意だ。13万リットルの血糊を使用したという血まみれシーンもある。

サブスタンス
ホラーな展開も見どころの1つ(写真:©2024 UNIVERSAL STUDIOS)

“グロテスク表現”は女性監督だから許された?

2024年のカンヌ映画祭では脚本賞を受賞したものの、見た人からは激しい賛否両論が渦巻いたそうだ。傑作と絶賛する人、激しく嫌悪する人と極端に分かれたのは、テーマやストーリーではなく、主にビジュアル表現である。

テーマやストーリーは現代性があるし、主演のデミは彼女のキャリアと重ねるような役柄で非常に説得力がある。ゴールデングローブ賞の主演女優賞も取っている。ミュージカル・コメディ部門で、女の業をコメディにまで昇華させたということなのだろう。

そこまでやるかというリミッターを超えた表現に挑んだことも称えたい。ただ、そこまでやらなくてもと思ってしまう観客も少なくないのである。

それでも、目をつぶったり手のひらで若干ぼかしてみたりしながら見ることをお勧めする。そうまでしても一見の価値はあると思うのだ。

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