安全保障関連法案、成立後も残る5つの課題

自衛隊は多国籍軍に参加するのか

第2に、「多国籍軍」へ参加するのか。紛争終結後のPKO(平和維持活動)に積極的に参加することを目指す点は評価できるが、多国籍軍が組織あるいは派遣されるのは、通常、紛争が終わっていない時点。その場合、自衛隊がこれに協力すると国際紛争に巻き込まれる危険が大きい。

改正法は、自衛隊の活動を「非戦闘地域」に、かつ「後方支援」に限れば問題ないとの考えに立っているが、やはり敵対行為とみなされるという有力な反論がある。この考えによれば、「多国籍軍」への自衛隊派遣は憲法違反となるので、できないことになる。

ただし、アフガニスタン戦争とイラク戦争の際に、我が国は特別法を制定して自衛隊を派遣しており、憲法違反の問題はすでにクリアされているという考えもありうる。

いずれは憲法改正が必要になる

第3に、日米安全保障条約を今後どのようにするか、という課題だ。安倍首相は国会での審議が始まるのに先立って訪米し、オバマ大統領に対してはもちろん、米議会でも法改正の趣旨を説明し、高い評価を得た。改正された法律に従って自衛隊が米軍の活動に協力すれば、米軍の負担はそれだけ軽減される。米国が評価するのは当然だ。オバマ大統領の喜色満面の表情が今も目の前に浮かんでくる。

わが国の国会審議では、今回の法改正により米国の日本に対する信頼感が高まり、第三国からの攻撃に対する抑止力がはたらくという答弁が行なわれた。しかし、抑止力は程度問題であり、「これだけ措置すれば抑止力が得られる、そうでないと抑止力は働かない」というようなことではない。

今回の法改正を米国が積極的に評価しているのは間違いないが、米国の我が国に対する期待感を完全に満たすものではない。米国には、米国本土が第三国から攻撃されても日本は米国の防衛に協力する義務はないことに不満を示す人がいるのが現実だ。

米国による抑止力を本当に高めるには、日米安保条約を改定する必要がある。今回の安保関連法の改正は、集団的自衛権の行使を認めたという点ではたしかに日本の防衛政策の大転換だったが、安保条約を改定しない限り日米が安全保障面で平等な立場に立つことはできない。

しかし、安保条約を改正して日本が米国の防衛に義務を負うようになれば、日本が国際紛争に巻き込まれることを厳禁する憲法と両立しなくなるおそれがある。

私は、一般論として、時代に合わない憲法は改正すべきであるが、平和主義は今後も維持すべきだと思っている。ともかく、抑止力の延長線上には憲法の改正問題があり、いずれはこの大問題についても検討が必要となる。

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