憲法違反の疑いの濃い法律に対して国民がどう向き合うか、今後も問題になりうる。安保関連法案について憲法学者や内閣法制局のOBを含め大多数の専門家が憲法違反であると判断した。改正法案を支持した人も、多くは防衛体制を強化すべきだという観点からであり、正面から憲法違反でないと論じた人は少なかった。国民の過半数が改正法案に反対していたのは憲法違反を危惧していたからだ。
関連法案の改正は成立したが、このような反対、疑問は今後日本の政治において大きな問題として残るのではないか。
なお、法律が憲法に違反しているか否かを審査・決定するのは最高裁判所なので、その判断に任せておけばよいという考えもあるが、違憲か否かについて国民が意見を表明するのは当然だし、必要だ。
対外関係でも3つの課題
次に、日本の対外関係における課題を見ていこう。自衛隊が日本の領域外に出て活動することが想定されているのは、集団的自衛権を行使する場合と、いわゆる集団安全保障に参加する場合がある。そうした対外関係において、3つの課題がある。
第1が、集団的自衛権の行使において、自衛隊を他国領土へ派遣するのかどうか。
改正法では「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの」として存立危機事態が認定されれば、日本国は「存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図る」ことが義務づけられる。しかも「組織及び機能の全てを挙げて、武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する」ときわめて重い義務が課せられた。自衛隊は、存立危機攻撃を受けた外国へ行かなければこの義務は果たせないだろう。
一方、安倍首相は、自衛隊が他国の領土へ派遣されることはない、と答弁したので、自衛隊がはたして他国の領域へ派遣さるのか不明確になった。
機雷の除去は、国会での審議が始まる前から重要な事例だとみなされていたが、安倍首相は国会の会期末近くになって、「今の国際情勢に照らせば、現実問題として発生することは具体的に想定していない」と答弁したので、自衛隊が機雷除去に出動するのかもはっきりしなくなってしまった。
今後、国際情勢の展開いかんで、これらの問題に関する日本政府の姿勢を明確化することが必要になるだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら