バイデン米前大統領(82)が公表「前立腺がんの骨転移」早期発見や検査、主な症状、転移後の治療や予後などについて医師が解説
●前立腺がんの治療
PSA値が高かった場合、再検査、前立腺MRI検査による病変の確認、針生検などの追加検査などが検討されますが、がんと診断されても、すべてが即座に治療対象になるとは限りません。
特に、進行がゆっくりで寿命にもそれほど関係しない、低または中間リスクの前立腺がんでは、「積極的監視(アクティブ・サーベイランス)」という選択肢もあります。これは定期的なPSA測定や再検査を行いながら、慎重に経過を見守る方法で、不必要な治療を避けることができます。
対して、根治を目指す治療としては、手術による前立腺全摘除や放射線治療などがあります。
いずれも治療成績は高いですが、手術では尿失禁や勃起障害、放射線治療でも腸の不調や勃起障害といった副作用も少なくありません。そのため、治療方針を選択する際は、医師としっかり相談することが必要です。
前立腺がんの「骨転移」とは?
バイデン氏は細胞を採取して調べる生検の結果、グリーソンスコア9(グレードグループ5)と評価される、悪性度の高い前立腺がんであることが判明しました。
前立腺の組織を顕微鏡で見ると、正常な細胞に近いものもあれば、がんとして形が大きく崩れているものもあります。この見た目の悪さを5段階(1〜5)で評価し、「最も多く見られるパターン」+「次に多く見られるパターン」の合計でグリーソンスコアがつけられます。
これをわかりやすく1〜5の5段階で示したものが、グレードグループという分類で、グリーソンスコア9(グレードグループ5)は、がんの勢いが強く、進行しやすいタイプであることを意味します。
加えて 、バイデン氏のがんは骨に転移している進行がんであることも確認されています。実は、前立腺がんはほかのがんに比べて骨に転移しやすいという特性があります。
骨転移が起こると、骨の痛みや骨折のリスク、脊髄圧迫による神経障害が表れやすくなります。しかし現在は、骨の壊れやすさを防ぐ骨修飾薬や、転移した骨に直接働きかける放射線医薬品による治療もしばしば行われており、骨転移の症状緩和ができるようになりました。
また、バイデン氏の場合はホルモン感受性を保っており、薬によりある程度の病状コントロールは可能だと考えられます。この場合の治療の選択肢はいくつかありますが、第一選択はホルモン療法(アンドロゲン除去療法)で、男性ホルモンであるテストステロンを抑制することで、がんの進行を抑えます。
このほかにも新しい分子標的薬なども登場しており、最近の10年で、骨転移がある前立腺がんの生存期間は約3倍に延びたといわれています。
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