バイデン米前大統領(82)が公表「前立腺がんの骨転移」早期発見や検査、主な症状、転移後の治療や予後などについて医師が解説
2020年における日本のがん罹患数統計データによると、男性は前立腺がんが8万7756人(16.4%)と最も多く、次いで大腸がん8万2809人(15.5%)、肺がん8万1080人(15.2%)。1980年から2020年の40年で日本の罹患者数は22倍にもなり、その後も伸び続けると予想されます。
この増加の背景には、日本人男性の平均寿命の延びや食生活の欧米化、PSA(前立腺特異抗原)検査の普及による早期発見の増加などが挙げられます。
早期発見された限局がん(前立腺にとどまり周りに広がっていないがん)の10年生存率は95%以上と非常に高く、手術や放射線治療などで完治する例も少なくありません。また、必ずしも積極的な治療を必要しないケースがあるのも、前立腺がんの特徴です。80歳以上の男性の前立腺を解剖すると、半数以上の方にがんが見つかったという報告もあります。
学会は50歳から推奨「PSA検査」
前立腺がんの早期発見に用いられるのが、採血で調べられるPSA検査です。これは血液中のPSAという物質の濃度を測定する簡単な検査で、前立腺がんのリスクを示す手がかりとなります。
日本では、PSA検査は国の肺がん・大腸がん・胃がん・乳がん・子宮頸がんを対象とした「がん検診5大プログラム」には含まれていませんが、多くの自治体は50歳以上の男性を対象に任意で検診を実施しており、補助があれば数百円、全額自費でも数千円程度で受けることができます。
日本泌尿器科学会も「50歳からのPSA検査実施を検討すること」を推奨しています。特に、父親や兄弟に前立腺がんの家族歴がある方はリスクが数倍に高まることから、検査を40〜45歳から受けてもよいでしょう。
ただし、PSAの値は前立腺肥大や炎症でも上昇することがあり、少し上昇したからといって必ずしも前立腺がんと診断がつくものではありません。そこはご注意ください。
●PSA検査の意義
PSA検査の意義については、大規模な臨床試験で、死亡リスクをわずかに低下させることが確認されています。具体的には、「1000人の男性をスクリーニングした場合、13年後までに前立腺がんによる死亡を約1.3人防ぐ効果がある」というものです。
そのため、アメリカではPSA検査の実施について、「本人の意思に基づく共有意思決定」が推奨されており、医師は検査による利益とリスクの両方を説明し、患者自身の価値観に沿った判断を重視しています。
そういう意味で、進行期で見つかったバイデン氏は、この検査をあえて受けていなかった可能性があります(一方で、在任中に身体的・精神的な衰えを周囲が隠していた実態を描いた複数の新刊書籍が出るタイミングでの発表だったため、同情的な世論を形成することで過去の健康問題隠蔽への批判をかわす政治的意図があったのでは、という憶測も出ています)。
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