ソニー、Xperia 1 VIIでαやブラビアの技術を結集するも、市場シェア低下と高価格化で苦境。“美しい負け方”に徹するか

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今後のXperia事業には、大きく2つの方向性が考えられる。1つは「超ニッチ化」だ。イギリスのスタートアップNothingや、ライカブランドのLeitz Phoneのように、年間数十万台程度の販売でも、高単価商品として事業存続を図る道だ。井辺氏も「ソニーには一定のファン層がいます。その数は減少しても、買い替えるコアユーザーは存在するでしょう」と指摘する。

しかし、より戦略的に重要なのは、もう一方の道、つまりXperiaを「次世代技術のインキュベーター(孵化器)」として位置づける道だろう。スマートフォンは最先端のAI、センサー、通信技術が集約されたデバイスであり、ここで培われた技術は、ソニーの将来事業に大きな影響を与える。

実際、ソニーはペットロボット「aibo」や電気自動車「Vision-S」など次世代エレクトロニクス事業に意欲を見せている。こうした次世代の機器でもモバイル通信は欠かせない要素と言える。

「美しい負け方」の哲学

ソニーのXperia事業は、市場シェアで見れば苦境にある。2025年のグローバルシェアは1%に満たない。しかし、その製品に込められた技術と哲学は、大量生産・大量販売とは異なる価値観を提示している。

Xperia
クラフトマンシップに基づくスマホとして生き残ることになるか(筆者撮影)

量的成功より質的卓越を追求する。それは日本のものづくりの伝統とも重なる選択だ。世界市場でのニッチポジションという現実を受け入れつつも、技術の粋を集めた製品を生み出し続ける。そしてその過程で蓄積される技術は、ソニーグループの未来を形作る重要な資産となるだろう。

Xperiaが体現するのは、そんなソニーならではの「美しい負け方」の哲学なのかもしれない。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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