「家事ができないよう少女の指を…」泥沼化するアフリカ・スーダン内戦で見た”理不尽な暴力”と”飢餓”のリアル
「スーダンで撃たれて逃げてきた人たちが、国境付近に殺到している──。そう報告を受けた私たちはすぐに国境の街、アドレへ飛びました」
と語るのは、スーダンの隣国チャドでスーダン難民の緊急対応にあたった、国境なき医師団の看護師である佐藤太一郎(38)。2023年6月のことだった。
「国境を越えてたどり着く人に24時間体制で医療を提供できるよう、テント病院を設営して、1日100人を超える患者さんを受け入れました。9割以上が銃で撃たれた人でした」
そこで目の当たりにしたのは、武装集団による理不尽な暴力の数々だった。
家事ができないよう指を切断された少女や、銃で撃たれて足の骨が砕けた赤ちゃん。両足を銃で撃たれて逃げることすらできなかった人は、ロバに乗ってテント病院までやってきた。

それでも佐藤らが対応できたのは、病院にたどり着くことができた人だけだ。凄まじい暴力の影響で病院までたどり着くことができず、必要な治療を受けられない人がたくさんいた。
「たとえ治療が受けられたとしても、物資が足りず、環境も整わない紛争下での完治は難しい。頭を銃で撃たれた青年は、命はとりとめたものの半身まひが残りました。懸命にリハビリを行う青年と父親を見ながら、なぜこんな理不尽なことが起こるのかと、彼らの未来に強い不安を感じました」(佐藤)
主導権争いが戦闘に発展
スーダンでは、国軍とRSFの権力争いが続いていた。
その対立が、2023年4月15日に軍事衝突に発展。それぞれの勢力による攻撃で大勢の市民が死傷し、国連によると、およそ1300万人が周辺国や国内で避難を余儀なくされる事態となった。890万人がスーダン国内で避難生活を送り、390万人はチャドをはじめとした近隣諸国へ逃れた。