台湾に来た中国人配偶者「陸配」がなぜ台湾の政治的問題として浮上したのか、その歴史と現政権の思惑、そして移民・人権問題(前)

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台湾人と結婚し、中国から台湾に来た中国人配偶者を意味する「陸配」。自らが陸配で、台湾でも作家、ジャーナリストとして活躍する上官乱さんが、台湾の「陸配」の実状について語ってくれた(写真・上官乱さん提供)
「中国は台湾を武力統一すべきだ」と主張した台湾の中国人女性が台湾の在留資格を取り消され、中国に帰された事件があった。2025年4月12日「『武力統一』を記した台湾の中国人妻はなぜ台湾から強制退去させられたのか、台湾内部の根深い対立と言論の自由の問題」でその内容を紹介した。強制退去させられた女性は、台湾で「陸配」と呼ばれる台湾人と結婚した中国人だ。
現在、台湾に約38万人いるという陸配の人たちの実態はどうなのか。台湾在住のジャーナリストで、自ら陸配として来台し、多くの陸配を取材してきた上官乱さんに話を聞きながら、陸配の実態について紹介する。3回に分けてお届けする。本記事はその前編。(インタビューは2025年5月6日、台北市で行った)

変容した差別意識と偏見

「中国から結婚で台湾にやって来た人たちに対する差別は、以前であれば主に経済的なものでした。貧しかったから来たのだろうと言われました。ところが今は、経済的な偏見は少なくなりましたが、政治的な差別に変わりました。以前は偏見があるだけで敵意はありませんでした。しかし、今ははっきりとした敵意を向けられます」

こう語るのは、台湾男性と結婚して台湾にやってきた中国出身の作家、上官乱さんだ。台湾人と結婚した中国出身の配偶者は、「陸配」(大陸配偶)と呼ばれている。

男女に限らないが、女性が男性の約10倍と圧倒的に多い。この陸配が台湾でクローズアップされている。陸配を理解することは、対立を深める台湾と中国との関係を理解するうえで必要になってきている。

きっかけは冒頭で紹介した陸配の女性で、台湾では「亜亜」事件と呼ばれている。この事件は、亜亜さんという台湾に在住する「陸配」のインフルエンサーのネット上での発言が、中国による「武統」(武力統一)を鼓吹したと認定されたことを理由に、台湾での在留資格を取り消されたというものだ。

台湾で陸配に対する締め付けが厳しくなっていることが浮き彫りになった事件だ。

「陸配」とはどんな人たちなのか――。そこで知人や関係者などから紹介されたのが上官乱さんだった。「上官乱」は作家、ジャーナリスト、インフルエンサーとして活動する彼女のペンネームでありハンドルネームだ。

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