中国とアメリカの間、あるいはロシアとEUの間でのように、シリコンのカーテンを越えて情報にアクセスすることは難しくなっている。そのうえ、カーテンの両側がそれぞれ異なるコンピューターコードを使い、別のデジタルネットワークによって動いていることが増えている。中国ではグーグルやフェイスブックは使えないし、ウィキペディアにはアクセスできない。アメリカではウィーチャットや百度(バイドゥ)や騰訊(テンセント)を使う人はほとんどいない。
そして、こちらのほうがさらに重要なのだが、これら二つのデジタル領域は互いにそっくりなわけではない。中国とアメリカが同じアプリケーションのそれぞれのローカル版を開発しているのではないのだ。百度は中国版のグーグルではない。アリババは中国版のアマゾンではない。それらは異なる目標や異なる設計思想・方式を持ち、人々の生活に異なる影響を与える。これらの違いは、世界の多くに影響を与える。なぜなら、ほとんどの国が自国のテクノロジーではなく中国とアメリカのソフトウェアに頼っているからだ。
アメリカと中国の異なるデジタル領域
アメリカは同盟国や顧客に、ファーウェイ社の5Gインフラのような中国のハードウェアの使用を避けるように圧力をかけてもいる。第一次トランプ政権は、シンガポール企業のブロードコムがアメリカのコンピューターチップ製造大手のクアルコムを買収しようとするのを阻止した〔訳註:その後、2018年にブロードコムはアメリカのデラウェア州に登記上の本社の移転を完了させた〕。
政権は、外国企業がチップにバックドア〔訳註:IT関連のシステムに不正に侵入するためにセキュリティを迂回する経路〕を組み込んだり、アメリカ政府が自らのバックドアをそこに埋め込むのを妨げたりするのを恐れたのだ。トランプ政権とバイデン政権の両方が、AI開発に必要な高性能のコンピューターチップの貿易に厳しい制限を課してきた。アメリカの企業は現在、そのようなチップを中国に輸出することを禁じられている。
このような措置は、短期的にはAI開発競争で中国への妨げになるが、長期的には、最小の構成要素に至るまでアメリカのデジタル領域とは異なる、完全に別個のデジタル領域の開発へと中国を向かわせるだろう。
したがって、これら二つのデジタル領域は互いからしだいに離れていくかもしれない。

