テロリストがAIで世界を壊滅させる…歴史学者ハラリが示す人類の「危険シナリオ」

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経済の領域では、かつての帝国は土地や綿花や石油といった物質的資源を基盤としていた。そのせいで帝国が経済的な富と政治的な権力の両方を一か所に集める能力には限界があった。物理と地質のせいで、世界中の土地や綿花や石油を一国に移すことはできない。

ところが、新しい情報帝国の場合は事情が異なる。データは光速で動かすことができ、アルゴリズムはたいして場所を取らない。その結果、世界のアルゴリズムの力は、単一の中枢に集中させることができる。単一の国のエンジニアたちが、全世界を動かすきわめて重要なアルゴリズムすべてのコードを書いて要(かなめ)の部分を制御することがあるかもしれない。

したがって、AIと自動化は貧しい開発途上国にとりわけ大きな難題を突きつける。AI主導の世界経済では、デジタル分野のリーダーたちが利益の大半を懐にし、自分の富を使って労働力を維持し、さらに利益をあげることができるだろう。一方、取り残された国々の単純労働者は価値が下がり、いっそう後れを取る。

その結果、サンフランシスコや上海では新しい仕事が大量に生まれ、莫大な富が蓄積されるのに対して、世界の他の場所の多くでは経済が破綻するということになるかもしれない。コンサルティングや会計監査などを行なっている世界的な企業のプライスウォーターハウスクーパースによれば、AIは2030年までには世界経済に15兆7000億ドルを加えることが見込まれているという。だが、現在の動向が続けば、AIの分野で圧倒的な優位に立つ中国と北アメリカがその金額の70パーセントを手に入れることが予想される。

シリコンのカーテンによる分断

冷戦中、鉄のカーテンは多くの場所では文字どおり金属でできていた。有刺鉄線が国と国とを隔てていたのだ。今や世界は、シリコンのカーテンによる分断が進んでいる。あなたのスマートフォンのコードによって、あなたがシリコンのカーテンのどちら側に暮らしているかや、どのアルゴリズムがあなたの暮らしを主導しているか、誰があなたの注意を支配しているか、どこにあなたのデータが流れるかが決まる。

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