日本新党の再来か、それとも… 政界ウォッチャーが看破する「安野新党」に渦巻く参院選"期待"と"不安"の正体
ところで、筆者は以前から安野氏の参院選出馬を期待していた。とりわけ、東京都選挙区では定数の6議席のほか、昨年の都知事選に出馬するために辞職した蓮舫氏の議席の補選を加えて、7議席を争うという広い間口となっている。さらに、1人で大量得票をさらっていく“スター”が不在なため、その能力が都知事選で注目され始めた安野氏にも当選の可能性があると思われたからだ。
しかし、安野氏は比例区からの出馬を選択。全国で広く票を集めようということになるが、その戦略はうまくいくのだろうか。
日本新党、れいわ新選組… 新党の過去事例を振り返る
参院選から国政入りした政党は、日本新党(1992年)、れいわ新選組(2019年)、NHKから国民を守る党(2019年)、参政党(2022年)などがある。このうち日本新党は政党助成法(1994年)以前のものになるが、全国比例区で361万7246票を獲得し、4人の当選者を出した。
党首の細川護熙元首相が新党構想を発表したのは、参院選(7月8日公示・26日開票)からわずか2カ月前だった。日本プレスセンターで会見し、その2日後に発売された『文藝春秋』に「日本最大の危機は、政治が内外の激変に対処する意志と能力を失ったことにある」とした「『自由社会連合』結成宣言」を掲載。瞬く間に大きなブームとなり、政治改革への機運が盛り上がることになった。
理由は、細川氏の「ブランド力」と出馬する面々の「豪華さ」にあった。細川氏自身は熊本藩主の直系であり、五摂家筆頭の近衛家の血を引く毛並みの良さがある。祖父の近衛文麿は戦後GHQ(連合国軍総司令部)に逮捕される前に青酸カリをあおって自死した“悲劇の宰相”で、その面差しは細川氏にそっくりだ。
日本新党の比例名簿には当時ニュースキャスターだった小池百合子氏(現・東京都知事)をはじめとして、農政学者の武田邦太郎氏、「ニコニコ離婚講座」創設者である円より子氏などが登載された。

ただ、登載順位をめぐるゴタゴタも発生している。プロテニスプレーヤーの佐藤直子氏が当初は比例名簿に登載されていたが、当選可能圏ではなかったため辞退した。
翌1993年7月の衆院選では35人が当選し、8月には細川連立内閣が成立。新しい政治に国民の期待が集まった。その背後には、細川氏の“熊本人脈”がブレーンとして存在し、華麗な“素材”をもとにしてストーリーを組み立てていたという事実がある。
山本太郎氏が2019年に結成したれいわ新選組も、元号の「令和」の発表に合わせて党名を決めるなど、結成のストーリー作りに工夫が見られた。加えて、同年の参院選では、比例区特別枠に舩後靖彦氏と木村英子氏を擁立し、重度障がい者の国会進出を実現した。
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