トヨタの人は、なぜ「段取り」がいいのか? 多くの人が見落とす「基本中の基本」
あなたに、小さな娘がいたとします。彼女の3歳のお誕生日、あなたは腕によりをかけて半日がかりで豪華な食事を準備し、素敵なホールケーキを手配しました。さぁどんなに喜ぶだろうかと胸をわくわくさせながら食卓に当の本人を呼んだところ、反応はいまひとつ。美しく盛り付けた高価なお肉も、数口しか食べません。
お肉はダメでもこっちは絶対に気に入るはずと満を持して出したケーキですら、一口食べて向こうへ行ってしまいました。親として最大限のことをやったつもりなのに、何が悪かったのでしょうか。
まさにこれは「やりすぎ」の典型例。誕生日パーティの目的は「親が満足するパーティを開く」ことではなく、「3歳の本人が喜ぶ場をつくる」こと。そうだとしたら、大人向けのお洒落な料理本からメニューをピックアップするのではなく、3歳の子どもに何が食べたいかを確認するべきです。
もしかしたら、高いお肉ではなくキャラクターのウィンナーがよかったのかもしれないし、生クリームたっぷりのケーキよりも大好きなストロベリー味のアイスクリームがよかったかもしれません。このように、目的を確認しないことで、せっかく力を注いでやったことがムダになってしまうこともあります。
見た目のよさは必要か?
次は、オフィスの例で考えてみましょう。
プレゼン資料を作成する際、レイアウトやアニメーションにこだわる人は少なくありません。見た目がよければ内容以上に相手によい印象を与えるという側面は事実ですが、見た目を良くするにはそれなりの時間が必要です。
重役が多く列席する重要顧客での最終プレゼンのような場面では、内容の良さは当然の要素であり、見た目が与える印象の良し悪しが最終結論を左右する可能性もあります。このような場面では、見た目も重視すべき要素かもしれません。しかし社内の関係者限定の資料であれば、要点を整理したシンプルな内容で十分。見た目をよくするために、ほかの業務にかける時間まで削って大きな工数をかけることは「加工のムダ」です。
皆さんの周りに、資料や仕事の完成度は高いものの、いつも納期ギリギリまたは遅れる方はいないでしょうか。この方は、「加工のムダ」を多く生んでいる可能性があります。
仕事の目的を確認することが大切である点は、これまでお話ししてきたとおりですが、その際に「いちばん大切な点」も併せて確認が必要です。
たとえば、打合せの議事録の場合。社外の重要なお客様向けであれば、完成度と納期がバランスよく求められます。どんなに早く送付したとしても、初めてお会いした役職の高い方向けであれば、一定の見た目や内容の網羅感が求められます。一方で、社内の関係者限定向けであれば、内容の完成度よりも納期重視であることが多い。細かい点はよいので重要ポイントのみを箇条書きで書いてあるものを、会議終了後なるべく早く共有することのほうが評価されます。
このように、「この仕事は何のためにやるのか」「何をいちばん重視すべきなのか」を確認することが、「加工のムダ(=やりすぎ)」を防ぐのです。
☑自分の役割=目的を明確にし、「主作業」の最大化をめざす
☑子どもの誕生日は親の視点は置いておき、まずはわが子の声を聞いてみること。
☑目的に寄与しないのであれば、資料のキレイさはムダでしかない
☑その業務で一番重視すべき点を確認。納期重視であれば、完成度8割でもよいかもしれない
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