絶好調「鳥貴族」の陰で大赤字、黒歴史と化しつつある「トリキバーガー」。味よし、値段もよし! なのに盛大に失敗した”本質的な理由”
同業態は2017年のスタート当初、完全に「スシロー」の名前を隠して展開していた。それ以前の開発段階から、社内でもその存在を知る人は限られていたという徹底ぶりだ。
確かに、スシローは回転ずし、一方の杉玉は酒とともにすしをつまむ居酒屋だ。利用用途は異なる。スシローのイメージで来店してしまうとそのギャップに戸惑う人もいるだろう。
杉玉はじわじわと出店を進め、今年4月にオープンした麻布十番店で100店舗を達成した。仮に最初からスシローの名前を大々的に打ち出していたらここまで広がっていなかったかもしれない。初動こそは「あのスシローの居酒屋?」と注目を集めるかもしれないが、その後のリピートはわからない。

他社も苦戦、チキンバーガー市場の難しさ
トリキバーガーが登場した同時期の2020~2021年は大手外食企業がこぞってチキンバーガーを出店していた。
唐揚げバブルや韓国ブームと相まってチキンバーガーないしフライドチキン専門店が乱立し、あわやチキンバーガー戦国時代の幕開けか……と思われたものの、うまくいっている例は少ない。
「焼肉ライク」などのダイニングイノベーションの「DooWop(ドゥーワップ)」は短命に終わってしまったし、ロイヤルホールディングスの「Lucky Rocky Chicken(ラッキーロッキーチキン)」も一時は複数店舗あったが、現在は代々木八幡店の1店舗のみに。
こうした他社の状況を踏まえると、トリキバーガーが鳥貴族の名前を打ち出し過ぎたこと以外にも、そもそも日本のチキンバーガー市場の難しさはありそうだ。
一方で、最近は渋谷にオープンした韓国発のチキンバーガー「マムズタッチ」という黒船が登場している。同ブランドは今後も日本での積極的な展開を目論んでいるそうだ。
ブランディングはともかく、「国産食材にこだわる」と謳うトリキバーガーは、鶏肉はもちろん野菜に、バンズの小麦まで国産だという。鶏を知り尽くした鳥貴族だからこその味付けで、値上げしたとはいえまだまだ手頃な価格で楽しめる。
店内もファストフード店とは思えない清潔感があり、業態のクオリティは高いと筆者は感じている。大井町店の幅広い客層を見るに、多くの人に受け入れられるポテンシャルはある。コンセプトは決して悪くなく、当初の誤解さえ拭えれば、復調もあるかもしれない。
ここから巻き返しなるか、今後のトリキバーガーに期待したい。
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