味の素と日清食品、海外展開で「すれ違い」 40年の歴史に幕、ライバル登場も一因?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
味の素のロゴは見当たらない

味の素としても、今回の話は渡りに船だったようだ。同社は世界130以上の国と地域で、調味料や冷凍食品を販売し、すでに売上高の過半を海外で稼いでいる。特に自社ブランドの浸透に力を入れている。ところが、NA社製品のパッケージに、味の素のロゴは見当たらない。これではシェアをどれだけ伸ばしても、ブランド戦略にはほとんど寄与しない。

NA社の持ち分法投資利益はここ数年、年間10億円前後で推移してきた。今回の売却によって味の素が得られる特別利益は約250億円。実際には、税金の支払いなどで手元に残る金額は減るが、この資金を味の素としては、別の海外事業への投資などに充てる考えだという。

東洋水産を選んだ味の素

別れの原因としてもう一つ考えられることがある。UBS証券の高木直実アナリストは「味の素と(日清のライバルである)東洋水産の提携も、今回の合弁解消に影響したのではないか」と指摘する。

AJINOMOTOのロゴが入った、味の素と東洋水産のラーメン

味の素は2014年3月に、東洋水産とインド、ナイジェリアにおける、即席麺の合弁事業契約を結んだ。今年4月には北米でも、冷凍麺の合弁・味の素東洋フローズンヌードル(AT社)を設立。6月にはAT社の冷凍麺生産工場の建設も発表した。先行販売中の「日式ラーメン」には、“AJINOMOTO”のロゴが入っている。

これに対し日清は「AT社の件は合弁解消の重要な要因ではない」と否定。しかし「味の素が東洋水産と手を組んだことに日清が怒っている」と漏らす関係者もいる。

たもとを分かった2大食品メーカーの海外戦略。果たしてそれぞれの思惑どおりに事が運ぶかどうか。

「週刊東洋経済」2015年10月17日号<10月10日発売>「核心リポート05」を転載)

中山 一貴 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(編集者・記者、マーケティング担当)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事