統合を前に弱みが露見、ユニー、必死の抵抗 合意を一時延期したファミマとユニー。不振のユニーはリストラを迫られる

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8月に計画していた経営統合の基本合意を延期した、ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(HD)。2015年3~8月期の連結決算はくしくも両社の明暗が分かれた。

ファミマが過去最高の営業利益を記録する反面、ユニーはコンビニの「サークルKサンクス」に加えて、GMS(総合スーパー)の「アピタ」や「ピアゴ」が想定以上に振るわず。増益予想から一転して営業減益となった。不振店舗の減損も響き、6年ぶりの最終赤字転落だ。

「対等の精神で経営統合」を目指すはずが、ここにきてユニーの不振があらためて浮き彫りになった。今後、ファミマと統合両社の大株主である伊藤忠商事による、再建圧力が強まる可能性がある。

GMS50閉店の真偽

「東京がしゃべったのだろう。こちら側からしゃべることはありえない」。愛知県に本社を構えるユニー関係者は、ファミマと伊藤忠への不信感を募らせる。「GMSを最大で50店閉鎖」との一部報道が先走って出たからだ。

これまでユニーは自主的にGMS改革を進め、収益性の劣る店舗は、直近5年間で30店ほどスクラップ・アンド・ビルドしてきた。50店閉鎖となると全約230店の2割に及ぶが、実際の赤字店舗は、全体の4割とみられる。

ユニーHDの佐古則男社長は、3月のファミマとの共同会見で、GMSの売却や縮小を「いっさい考えていない」と明言。10月2日の決算説明会でも「そのような事実はない」と火消しに必死である。

あるユニー関係者は「ファミマと伊藤忠はGMSを経営したことがないので不安が大きいのだろう。どうしてもリストラが中心になってしまう」と一蹴する。越田次郎・取締役専務執行役員は、伊藤忠がファミマ株の約37%を握る事実を指摘したうえで、「合併の決議は3分の2以上の賛成が必要だから、伊藤忠が反対すると成立しない。伊藤忠の気持ちをある程度酌まないと、統合はうまくいかない」と明かした。

佐古社長も大量閉鎖を否定する一方、「是々非々で閉店する物件はある。関東は継続的に厳しい。首都圏スーパーとの競争が激しく、店舗数の少ないウチはブランド力が弱い」とも認め、地盤である中京以外での閉鎖を示唆する。

実際、3~8月期の地域別の前期比売上高を見ると、中京エリアが3.3%増だったのに対し、関東エリアは1.9%減と前年を下回った。関東では過去数年、店舗数が三十数店で横ばいに推移しているが、売上高は前年を超えられないままだ。

「名古屋のやり方が通用しない」──。ユニーはかねてからそう認識しており、品ぞろえの模索が続く。“中京のお殿様”から脱却を目指し、首都圏を強化してきたが、現実は厳しい。競合のヤオコー、ライフコーポレーションなど首都圏スーパーは生鮮食品中心に順調だが、その波に乗れていないのが実態である。

同業他社はユニーの大量閉鎖をチャンスととらえている。滋賀県を軸にGMSを展開する平和堂の夏原平和社長は、「われわれには有利に働く。10月にもユニーさんが滋賀で閉める店があるが、ウチの売上高は上がると思う」と強気を隠さない。

ユニーの閉鎖店の近くには、地域密着で堅調な経営を続ける平和堂のほか、格安店のベイシア、イオン系のザ・ビッグなどがあり、ユニーの競争力は劣っている。今後は統合に伴い、全国で顧客の奪い合いになる公算もある。

基本が弱いコンビニ

他方、業界内での序列がより鮮明化してきたのが、サークルKサンクスだ。3~8月期には、不採算の約100店を減損対象にするなど、負の遺産を処理。セブン|イレブン・ジャパンやファミマなど大手ライバルが過去最高益とみられる中、営業利益約2割減と一人負けだった。

1店当たりの1日平均売上高(日販)は、首位セブンとは20万円強、ファミマとも約7万円と、厳然たる開きがある。佐古社長は「欠品はないか、店内はきれいかといった、基本的なところが弱い」と自己分析する。

西日本のサンクスオーナーは「15年やってきたが売上高はピークの半分。今夏も、アイスコーヒー用の氷が切れたのに仕入れられず、大手と力の差を感じた。ファミマと統合して大きくなったほうがいい」と漏らす。反対に、ファミマとの統合で本部との契約内容悪化、看板統一を不安がるオーナーもいる。

旧サークルKと旧サンクスすら、主導権争いで迷走した結果、いまだ契約などを統合し切れず、他コンビニへ鞍替えする例が後を絶たない。

拡大志向の強いファミマは、愛知が地盤のコンビニ、ココストアを130億円で吸収合併。サークルKサンクスの外堀を埋めて、看板もファミマへと順次転換、王者セブンを追撃したい構えだ。

旗色悪いユニーHDの佐古社長は「(統合の)根本的な問題は解決している」と強調。あくまで10月末までには統合が合意できる見通しを示した。ただ、ファミマの中山勇社長は、「答えられない」の一点張り。関係者の思惑はなお入り乱れている。

「週刊東洋経済」2015年10月17日号<10月10日発売>「核心リポート03」を転載)

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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