“芸能界の壁”を越えて……のん、民放ドラマ「キャスター」11年ぶり復帰が意味すること

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だが、キャリアが順風満帆に続くかと思われた矢先、芸能界の壁が立ちはだかる。2015年から2016年にかけての所属事務所との契約トラブルにより、「能年玲奈」という芸名の使用が困難となり、「のん」として再スタートを切ることとなった。テレビからは姿を消したが、彼女の表現活動は止まることはなかった。地上波では見かけなくなったその間も、映画・アニメ・アート・音楽と幅広いジャンルで活動を続けていた。

その1つが、2016年公開のアニメ映画『この世界の片隅に』である。原作はこうの史代による漫画で、戦時下の広島・呉に生きる女性・北條すずの視点から、何気ない日常と戦争による喪失が静かに描かれる。

のんはすずの声を担当し、その演技を絶賛された。台詞に感情を込めすぎず、しかし心の揺れを確実に伝える繊細な抑揚と間の使い方。どこか頼りなさげで、おっとりとしたすずの存在感を、声だけで表現しきった演技は、観客の心に深く染み入った。

公開当初はわずか63館での上映だったが、SNSを中心に口コミで火がついて上映館数は拡大し、興行収入は27億円を超える異例のロングランヒットとなった。

音楽やアートにも注力

その後も、のんはコンスタントに映画に出演しながら、音楽活動やアート活動にも注力していく。2017年には自主レーベル「KAIWA(RE)CORD」を立ち上げ、自身で作詞作曲も手がけた。彼女が発表した楽曲は、可憐さと怒り、ユーモアと孤独が入り交じった個性的なものだった。そこには何にも縛られない表現者としての決意が込められているように感じられる。

2020年に主演した映画『私をくいとめて』では、脳内に「相談役」を飼っている独身女性・黒田みつ子を演じた。自意識過剰で一歩踏み出せない主人公を、ユーモアと哀愁を織り交ぜながら生き生きと演じ、同世代の女性たちから熱い支持を受けた。

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