初登場で世界2位、80カ国で週間ランキング入り こだわり抜いた『新幹線大爆破』が”日本発Netflix映画”の成功例といえる訳

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特別協力のJR東日本とせめぎ合いも

JR東日本が特別協力したことも本作の話題の1つです。これによって、実際に運行されている列車を舞台にでき、リアリティと没入感が増しました。一方、時に「リアルと理想とのせめぎ合いがあった」ことも樋口監督は吐露しています。JR東日本から「実際の乗務員はその速さで話さない」「信号が点滅する順番が違う」などと細かく指導を受け、編集が終わった後でも修正を行うケースがあったといいます。

劇中では現実には起こりえないようなシーンも多々あります。そんな時も「映画だから何でもアリ」と強引に進めず、かと言って簡単に諦めずに「現実で起こったとしたらどうなのか」「どうすれば想定した場面を作り出せるのか」とJR東日本と話し合いを重ねたのです。

たとえ苦労話であっても終始、心から楽しそうに撮影現場を振り返る樋口監督の姿も印象的でした。新幹線そのものに特別な思い入れがあったそうです。子どもの頃に過ごした茨城県古河市は、東北新幹線の試験走行に使われる実験線が通る場所。その高架下を毎日くぐりながら学校に通っていたそうです。「運命を感じてます」という思いは、本作の徹底された映像技術力につながっているような気がします。

特撮映画の第一人者、樋口真嗣監督
『シン・ゴジラ』などを代表作に持つ特撮映画の第一人者、樋口真嗣監督が限界突破に挑んだ(画像:Netflix)

本作は4月23日の配信以来、アメリカやアジア、ヨーロッパ、アフリカなど世界各地で幅広く視聴され、初週から80カ国で週間ランキングに入りました。昨年ヒットした実写版『シティーハンター』(鈴木亮平主演)に続く、日本発Netflix映画の成功例だと言えます。

強いて注文をつけるならば、爆弾を仕掛けた犯人が明かされるパートの脚本が玉に瑕です。爆弾を解除するための身代金として犯人が1,000億円を要求した背景の描き方が甘く、登場人物たちの心情を汲み取りにくくさせています。残念な点ではありますが、日本の映像技術の限界値に迫った特撮クオリティの高さは申し分ないものです。たとえ特撮に興味がなくても、映像力に圧倒されるはず。パニック映画が好きな人を一人残らず楽しませようとする勢いを感じます。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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